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映画「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」ネタバレ感想&解説 ジェームズ・ガン初期作品を思い出す、不謹慎ダークコメディの快作!

「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」を観た。

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DCコミックスの世界観をベースに、悪役たちがチームを組んで戦う姿を描いたアクション大作。2016年にデヴィッド・エアー監督により映画化された「スーサイド・スクワッド」を、新たにリブートした作品。監督は「スーパー!」や「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで大成功を収めたジェームズ・ガン。出演は、前作に続いてハーレイ・クイン役を演じるマーゴット・ロビーほか、「パシフィック・リム」のイドリス・エルバ、「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」のジョン・シナら。さらにCGキャラであるキング・シャークの声は、あのシルベスター・スタローンが担当している。二度目の映画化となる「ザ・スーサイド・スクワッド」の出来はどうであったか?今回もネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:ジェームズ・ガン

出演:マーゴット・ロビーイドリス・エルバジョン・シナシルベスター・スタローン

日本公開:2021年

 

あらすじ

ますますクレイジーになったハーレイ・クインを筆頭に、最強スナイパーのブラッドスポート、水玉を放つ能力を持つポルカドットマン、平和のためには暴力もいとわないという矛盾な生き様のピース・メイカー、ネズミを操って戦うラットキャッチャー2、そして食欲以外に興味のないキング・シャークという、いずれも強烈な個性をもった悪党たちが、減刑と引き換えに危険な独裁国家から世界を救うという決死のミッションに挑む。

 

パンフレット

価格900円、表1表4込みで全44p構成

オールカラーで紙質も良く、パンフレットとして全体のクオリティは高い。ジェームズ・ガン監督やマーゴット・ロビーを始めとした各キャストのインタビュー、さらに樋口真嗣氏、稲垣貴俊氏、長谷川町蔵氏、宇野維正氏のコラムやプロダクションノートなどが掲載されており、読み応えがある。

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感想&解説

デヴィッド・エアーが監督した2016年版「スーサイド・スクワッド」最大のガッカリポイントは、キャラクターたちが全く悪党ではなかったことだ。ウィル・スミスが演じていたデッドショットを筆頭に、なんだか基本的に良いヤツらな上にやたらとクヨクヨしていて、ヴィランとして魅力がない。要するに悪役が活躍する映画の主人公として、全くカッコ良くなかったのである。唯一マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインだけがキャラ立ちしていて、その後「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」というスピンオフが制作されたのは周知のとおりだが、「エンド・オブ・ウォッチ」や「フューリー」といった傑作アクションを手掛けてきた、デヴィッド・エアーの作品とは思えない駄作だったと思う。エアー監督自身もtwitterで、「スーサイド・スクワッド」を作りなおしたいと発言しているようだが、いろいろな事情が重なった故の残念な結果だったらしい。

そういった経緯もあり、”続編”ではなく”リブート”として「スーサイド・スクワッド」を作り直す事になったのは、必然だったのだろう。そこで白羽の矢が立ったのは、ジェームズ・ガンだった訳である。ジェームズ・ガンといえば、マーベル映画である「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズの監督だが、10年前に発信した”不適切ツイート”が原因でディズニーから解雇された直後だったにも関わらず、DCコミックスの映画化をしているワーナー・ブラザーズから、「撮りたい映画を撮っていい」と声がかかり、本作の製作が決まったようだ。なんとも熾烈な引き抜き合戦が行われたようだが、その後、出演者たちが連名で再雇用を求める声明を発表したり、ファンによるオンライン署名活動のおかげで、現在は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3」の監督再雇用が決定している。この事実からもジェームズ・ガンは、映画作りにおいては非常に信頼がおける監督であると言えるだろう。


そんなジェームズ・ガンが監督・脚本を務めた「ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結」だが、前作とは違い「R15+」というレーティングからもわかる通り、残酷描写も含めて良い意味で”攻めた作品"となっている。今でこそ「ガーディアンズ~」の影響からか、老若男女が楽しめる娯楽監督のイメージだが、2007年の長編デビュー作「スリザー」や2010年「スーパー!」からも表現されていたが、もともとはゴア描写が得意な監督なのだ。本作はそれらの作品を思い出す作風になっていると言える。また監督自ら「キャラクターを殺したあとの影響は考えない」という発言をしているとおり、本作においては「主人公チーム」であっても途中で誰が死ぬか?が予想できない構成になっており、それが本作の面白さにも繋がっているし、まず映画冒頭の展開からもそれが示されている。


まず「ガーディアンズ~」シリーズにおける「ヨンドゥ」役で有名なマイケル・ルーカーが刑務所にいるところを、アメリカ政府に属するアマンダ・ウォラーから任務を受け、”新生スーサイド・スクワッド”が結成されるところが描かれる。ここからネタバレになるが、その中にはハーレイ・クインもいるし、前作にも登場した「キャプテン・ブーメラン」もいるため、(これが今回の主人公たちか)と思ってスクリーンを観ていると、颯爽とヒーローのように登場した直後にも関わらず、なんと映画開始10分弱で彼らは八つ裂きの血みどろにされて、ハーレイ・クイン以外は全滅してしまう。いきなり大きなツイストで、観客を笑いとグロ描写に叩き込むのだ。実はこのチームではない別のスーサイド・スクワッドが本作の主人公たちになるのだが、このオープニングシークエンスから、今回のジェームズ・ガン版の世界観を提示してくるのである。


そして基本的には、このテンションと演出は終盤まで続いていく。また前作のデヴィッド・エアー版とは違い、各キャラクターがしっかり立っているのも良い。特にシルベスター・スタローンが声を担当している、「サメ男キング・シャーク」はルックスの意味不明さも含めて、ツッコミどころ満載で面白い。言動の拙さから「ガーディアンズ~」における「グルート」的な無垢キャラかと思いきや、いきなり人間を頭からバリバリ食べてしまうので油断出来ない。また“謎の水玉を投げる陰キャ”であるポルカドットマンは、すべての人の顔が母親の顔に見えるという病を患っており、終盤のあるシーンなどはニヤニヤさせられる。本作においては、あのハーレイ・クインがまともなキャラクターに見えるほどで、全編に亘ってジェームズ・ガンのコメディセンスが炸裂していると言えるだろう。特に序盤、ハーレイ・クインがある死にゆくキャラクターから“槍”を渡されるシーンは、「映画あるある」をネタにした爆笑シーンで、思わず声を出して笑ってしまった。


終盤は意外なことに怪獣映画のジャンルになり、CGで作られた巨大ヒトデが街中を暴れまくるというバカバカしい展開に思わず拍手したくなる。そして、この絶対に勝てそうにない相手に毅然と立ち向かっていくスーサイド・スクワッドのメンバーが、最後にはカッコよく見えてくるのだ。「嫌われ者で最下層な存在」が最後には大きな敵をも倒すという作品のメッセージも明快で、爽やかな気分で映画館を後にできる快作だったと思う。全体的にはB級感の漂う「不謹慎ダークコメディ」で、大幅に予算はかかっているだろうが、それでもジェームズ・ガンの初期を思い出す作品だった気がする。何度も比較して申し訳ないが、デヴィッド・エアー版よりは10倍面白い映画だった。132分とやや長い為に中だるみする場面もあるにはあるが、過度に期待しすぎなければ”夏休み映画”として十分に楽しめる作品だと思う。エンドクレジット後には続編を期待させる映像が付くので、席を立たないようにご注意を。

7.0点(10点満点)