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映画「DUNE デューン 砂の惑星」ネタバレ感想&解説 IMAXでの鑑賞をオススメ!面白さよりも美しさを優先したSF映画の傑作!

「DUNE デューン 砂の惑星」を観た。

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近作では「ブレードランナー2049」「メッセージ」といったSF作品をよく手掛けているドゥニ・ヴィルヌーブ監督が、フランク・ハーバートSF小説の古典「デューン砂の惑星」を映画化。1985年にはデヴィッド・リンチ監督による最初の映画化もされている作品だ。また2014年にはドキュメンタリー映画である「ホドロフスキーのDUNE」という作品も日本公開されており、アレハンドロ・ホドロフスキー監督が「デューン砂の惑星」を映画化したいと熱望し、七転八倒しながらも頓挫する姿が描かれている。ドゥニ・ヴィルヌーブにとっても悲願の企画だったらしい。主人公となるポール役は「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ。他の出演は「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」のレベッカ・ファーガソン、「アクアマン」のジェイソン・モモア、ディズニー三部作「スター・ウォーズ」のオスカー・アイザック、「アベンジャーズ」シリーズのジョシュ・ブローリン、「007スカイフォール」のハビエル・バルデムら。今回もネタバレありで、感想を書いていきたい。


監督:ドゥニ・ヴィルヌーブ

出演:ティモシー・シャラメレベッカ・ファーガソンジョシュ・ブローリンオスカー・アイザック

日本公開:2021年

 

あらすじ

人類が地球以外の惑星に移住し、宇宙帝国を築いていた西暦1万190年、1つの惑星を1つの大領家が治める厳格な身分制度が敷かれる中、レト・アトレイデス公爵は通称デューンと呼ばれる砂漠の惑星アラキスを治めることになった。アラキスは抗老化作用を持つ香料メランジの唯一の生産地であるため、アトレイデス家に莫大な利益をもたらすはずだった。しかし、デューンに乗り込んだレト公爵を待っていたのはメランジの採掘権を持つハルコンネン家と皇帝が結託した陰謀だった。やがてレト公爵は殺され、妻のジェシカと息子のポールも命を狙われることなる。

 

パンフレット

価格900円、表1表4込みで全40p構成。

正方形。表紙もマットPP仕様で紙質が良く、極めてクオリティが高い。ドゥニ・ヴィルヌーブ監督とティモシー・シャラメのクロストークの他、各キャストインタビュー、脚本家の佐藤大氏、映画評論家の大場正明氏、尾崎一男氏、森直人氏によるコラムやプロダクションノートなどが掲載されている。

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感想&解説

デヴィッド・リンチ監督版の「デューン砂の惑星」を初めて観たのは小学生高学年のころで、90年くらいに確かテレビで放映されたのだと思う。その頃SF映画といえば「スター・ウォーズ」シリーズしか知らず、「砂の惑星」というタイトルから”惑星タトゥイーン”みたいな舞台で繰り広げられる冒険活劇だと、ワクワクしながら観始めたのを覚えている。当時はデヴィッド・リンチという監督の名前も知らないし、「イレイザーヘッド」も「ブルーベルベット」ももちろん観ていなかった。観終わった感想としては散々で、逆にあまりの”つまらなさ”に衝撃を受けたのを覚えている。出演のカイル・マクラクランはカッコ良かったのだが、いわゆる小学生を興奮させる”映画的な躍動感”や”カタルシス”が皆無で、当時はひどくガッカリしたものだ。その後「ホドロフスキーのDUNE」というドキュメンタリーを観て、「ホドロフスキー版の方が100倍面白そうだったのに」というシンプルな感想を抱きつつ、数年後にあのドゥニ・ヴィルヌーブが再映画化するというニュースを観て以来、楽しみにしていた作品だった。そして9月の世界公開を経て、ついに日本でも公開となった訳である。

公開から数日を経て「今作はIMAXの方が良い」という意見が多かったので、レイトショーにてIMAX鑑賞。上映時間は155分とやや長めだったので、(途中で眠くならないかな?)などと心配しながら観始めたのだが、これが圧倒的な映像美の”つるべ打ち”で、あっという間に時間が過ぎたというのが正直な感想だ。とにかく「気の抜けた安いショット」が全くないのがすごい。特にSF映画やディザスター映画などに多いと思うが、”VFXの派手な見せ場”はカメラワークやカット割も凝って見応えがあるのに、キャラクターの会話シーンなどになると、急に半端な画角の定点や単純なバストアップのつまらない画が続いて、映画が弛緩してしまう事がある。これが本作には全くないのだ。要するに「セリフだけ」で映画が推進していくことがほぼ無くて、徹頭徹尾「映像と動き」で観客の興味をグイグイと引っ張っていくのである。


ちなみに原作は未読なので、語弊はあるし乱暴なのは百も承知だが、映画版2作だけを観る限り「デューン砂の惑星」は、ストーリー自体が面白いというタイプの作品ではないと思う。もちろん60年前に書かれたSFの古典であり、それこそ「スター・ウォーズ」を始めとした以降の作品にも様々な影響を与えたという意味で、”偉大な作品”であることは間違いないのだが、「この先どうなるのだろう?」という強烈なストーリー的吸引は薄く、しかも主人公は最初から「選ばれた人」なので感情移入もしずらい。ルーク・スカイウォーカーのように、辺境の一市民として育った若者が成長していく物語ではないからだ。原作が同じなので当然だが、それはデヴィッド・リンチ版のみならず本作ドゥニ・ヴィルヌーブ版にも当てはまるため、本作を「退屈だ」と評している方は冒頭から頻発する「専門用語」の嵐と、ある程度先の読めるシンプルなストーリー展開に対しての評価なのだと思う。そして、今作は実は「Part.1」で続編があるというのも、事前告知されていないのでアンフェアな印象を受けるかもしれない。またいわゆる「アクション映画」としても、本作はかなり物足りない。格闘アクションシーンや空中での飛行船によるチェイスシーンなど、もっと盛り上げられるだろうという場面でも、ドゥニ・ヴィルヌーブは必要以上に娯楽要素を足さない。その姿勢にはストイックさすら感じてしまうが、ここには本作「DUNE デューン 砂の惑星」における監督なりのコンセプトがあるのだと思う。


そして、そのコンセプトとは「美しいSF映画」の創作なのだろう。「デューン」の魅力は、SFとしての設定の細かさと世界観の豊かさだと思う。主人公ポールとその両親であるレトとレディ・ジェシカが属するアトレイデス家、そのアトレイデス家と対立しているハルコンネン家、そして砂の惑星アラキスの先住民である自由の民フレメンが、惑星アラキスでしか取れない香料(スパイス)を巡って、それぞれの立場で争うというのが物語の概要だ。そしてここに本作では姿を現さないが、「宇宙帝国の皇帝」や「ベネ・ゲセリット」という特殊な能力を持つことによって大きな政治力を持つ、女性だけの団体などの思惑が絡んでいく。デヴィッド・リンチ版では「ギルド」も大きな組織として描かれていたので続編では登場しそうだし、「クウィサッツ・ハデラック」という超人的な存在や、「ジェダイ・マインド・トリック」の原型を感じる「ボイス」という人を自由に操れる能力、「保水スーツ」「クリスナイフ」や暗殺道具「ハンター・シーカー」などのガジェット類、「オーニソプター」という昆虫のような乗り物など、映像として観せられると興奮するSF設定の数々。この世界観を特大バジェットと最先端の技術力で”美しく”表現したのが本作であり、ここに過度の”エンタメ演出”は必要ないという監督の判断があったのだろう。本作はいわば「面白い映画」ではなく、「美しい映画」なのだ。


だからこそ、本作の主役は世界でもっとも美しい俳優であるティモシー・シャラメが選ばれているのだと思う。なにせ、彼の愛称は「プリンス・オブ・ハリウッド」なのだ。完璧に統御された画面の中に、あまりに完璧なフォルムのティモシー・シャラメが主人公として中心に存在することで、ドゥニ・ヴィルヌーブが求める映像になったのだと感じる。普通のSF映画やアクション映画の主人公としては、ティモシー・シャラメは線が細すぎる感があるが、この「DUNE デューン 砂の惑星」に関していえば完璧な配役だと思う。またレベッカ・ファーガソンジョシュ・ブローリンオスカー・アイザックハビエル・バルデムジェイソン・モモアといった主役級の役者が贅沢に配置されているのも目に楽しいし、ラース・フォン・トリアー監督作常連のステラン・スカルスガルドが特殊メイクで悪役を演じていたり、シャーロット・ランプリングが「教母」という印象的な役で登場したりと、キャスティングの豪華さもこの作品の大きな魅力だ。特にシャーロット・ランプリングは、ホドロフスキー監督版の「レディ・ジェシカ」役の候補になっていたらしいので、この配役は興味深い。


本作の撮影監督は、「ボーダーライン」「ブレードランナー2049」で組んでいたロジャー・ディーキンスから、「ゼロ・ダーク・サーティ」や来年公開「THE BATMAN -ザ・バットマン-」のグレイグ・フレイザーに変更になっているらしいが、自然光による撮影が得意な撮影監督だという事と、砂漠シーンが多い映画ということもあり、デヴィッド・リーン監督の名作「アラビアのロレンス」を思い出す画面作りだった。アブダビで撮影されたという広大な砂漠に、ポツンとキャラクターが佇むようなショットと、巨大なサンドワームに追いかけられるようなダイナミックなショットが共存しており、つくづく映像で楽しませる映画なのだと思う。そういう意味ではやはり本作は映画館、出来ればIMAXでの鑑賞を強くオススメしたい。この映画だけはタブレットスマホ画面で観ても、まったく魅力の伝わらない作品になってしまう。それは前述のようにストーリーや、アクションシーンの演出で魅せる映画ではないからだ。個人的には大満足だったので続編も期待しているが、本作の興行次第ということらしいので、なんとか世界中で大ヒットしてほしい。あとドゥニ・ヴィルヌーブさん、「ボーダーライン3」も待っています。

 

8.0点(10点満点)

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ドゥニ・ヴィルヌーヴの世界 アート・アンド・ソウル・オブ・DUNE/デューン 砂の惑星