映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイレビュー&感想Vol.288:「セールスマン」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は288本目。タイトルはアスガー・ファルハディ監督による、2017年公開作品「セールスマン」。特典映像としては、「メイキング」「タラネ・アリドゥスティ 初日舞台挨拶」「タラネ・アリドゥスティ 来日メッセージ」「オリジナル予告編」「劇場予告編」で、計44分が収録されている。「メイキング」では、アスガー・ファルハディ監督が「『セールスマンの死』とこの映画の関係を説明すると、戯曲はNYの再開発が進む地域の家族の話なんだけど、この映画の舞台も類似した場所にしたくて、危険で不安定な建物を舞台にしたんだ。壊れゆく旧住居は、演劇のステージのようにこの映画のメイン舞台だ。物語の重要なシーンはそこで起こるからね。」と言い、「まず前の住人である娼婦アフーの話を書いたんだけど、脚本を書き直すうちに徐々に登場シーンが削られ、結果的に存在感が強くなったね。人物について多く語るより姿を見せない方が、観客の想像を掻き立てて存在感が増すんだ。今までの監督作では最後に登場する人物を途中で暗示していたので、観客は想像ができた。しかし今回は違うんだ。すでに紹介した人物とは全くの別人が最後の重要人物として登場するんだよ。」と語っている。また「この映画の中で、キャラクターたちが舞台で演じている”セールスマンの死”で終わる物語と、もう一つの”夫エマッドと妻ラナ”の物語は似ている。この二つの物語の人物の服装はだんだんと変わっていき、服の色が舞台の最終幕の人物と同じになる。これによって主人公夫婦が舞台で演じた出来事が実際の人生に起こって、二つの物語は繋がるんだよ。」と答えている。

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作品としては、「別離」「ある過去の行方」などで知られるイランの名匠アスガー・ファルハディ監督が手がけた、サスペンスドラマ。第69回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で「男優賞」と「脚本賞」を受賞した他、第89回アカデミー賞では「外国語映画賞」を受賞している。出演は「別離」のシャハブ・ホセイニ、「彼女が消えた浜辺」のタラネ・アリドゥスティなどで、どちらもアスガー・ファルハディ作品の常連だ。教師エマッドとその妻ラナは小さな劇団に所属し俳優としても活動している夫婦だったが、旧家が取り壊しになるために引っ越した矢先、ラナが侵入者に暴行されてしまう。心に傷を負った妻と、犯人を捕まえるために躍起になる夫の間では感情のすれ違いが生じ始め、犯人の決定的な手がかりを得たエマッドは暴走していくのだったという物語で、夫婦二人が劇団で演じている「セールスマンの死」という作品と、本流が微妙にリンクしていきながら語られていく構成が面白い。アスガー・ファルハディ作品らしい、割り切れなさのある不穏な余韻に満ちたエンディングで、鑑賞後に色々と考えさせられるだろう。最新作「英雄の証明」を見逃しているので、これからぜひ鑑賞したい。

 


監督:アスガー・ファルハディ

出演:シャハブ・ホセイニ、タラネ・アリドゥスティ、ババク・カリミ

日本公開:2017年