映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイレビュー&感想Vol.300:「ラルジャン」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は300本目。タイトルはロベール・ブレッソン監督による、1986年日本公開作品「ラルジャン」。特典映像としては、特になし。第36回カンヌ国際映画祭では、「監督賞」を受賞している。作品としては、「スリ」「たぶん悪魔が」「湖のランスロ」などを手掛けたフランスの映画監督であるロベール・ブレッソンの遺作であり、トルストイの中編小説「にせ利札」を原作にした、ヒューマンサスペンスだ。映画の舞台はパリ。高校生のノルベールは、父親に金の無心をするが断られてしまい、友達への借金が返せず困った彼は、クラスメートに相談すると500フランのニセ札を渡される。ノルベールは町の写真店でこのニセ札を使用することでつり銭を受け取るが、さらにこのニセ札が写真店に仕事でやってきたイヴォンに支払われてしまったことにより、彼は大きな悲劇に巻き込まれてしまうという物語だ。ニセ札を掴んでしまったばかりに無実の罪に問われ、仕事と妻と幼い娘さえも失って、さらなる犯罪に落ちていく主人公のイヴォンの姿は、あまりにも悲しい。

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いわゆる劇伴と呼ばれるBGMはなく、役者たちの演技も極めてミニマムで終始淡々と映画は進む。特に登場人物たちの感情を排したような演技は、異様とも思えるレベルで、本作のタッチには合っている。どうやらロベール・ブレッソン監督は、出演者に俳優を使わず素人を起用することで有名らしいが、彼が作品に出演する演技者を「俳優」ではなく「モデル」と呼び、彼らが演技で感情移入しないように演出する手法は、作品に独特のトーンを与えていると思う。さらにクライマックスのある展開は、そこに至るイヴォンの行動にも解釈の幅があり、彼にとってあれは救いの行動なのか人間への悲観なのか、一方的な解釈を許さない作りになっているのも面白い。いわゆる芸術映画のような作風だが、決して難解な映画ではなく83分という上映時間もあって、あっという間に終わってしまう印象だ。今回、《スペシャル・プライス》の廉価盤ブルーレイが発売されたことを機に、ロベール・ブレッソン監督作を初めて鑑賞したが、かなり気に入った。同じく廉価版で1960年公開作品「スリ」もリリースされており、こちらも購入済みのためまたレビューを書きたい。

 

 


監督:ロベール・ブレッソン

出演:クリスチャン・パティ、カロリーヌ・ラング、ヴァンサン・リステルッチ、シルヴィ・ヴァン・デン・エルセン

日本公開:1986年