映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイレビュー&感想Vol.332:「クラッシュ 4Kレストア無修正版」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は332本目。タイトルはデヴィッド・クローネンバーグ監督による、1997年日本公開作品「クラッシュ」。特典映像としては2枚組で、「予告編集」「トロント映画祭『クラッシュ』特別上映時 デヴィッド・クローネンバーグヴィゴ・モーテンセントークイベント」「インタビュー映像:ピーター・サシツキー、ジェレミー・トーマス、ハワード・ショア、ディアドラ・ボーエン」「デヴィッド・クローネンバーグ監督短編映画」「インタビュー映像集」「EPK素材」「ビハインド・ザ・シーン」の計207分が収録されている。トークイベント」では、デヴィッド・クローネンバーグ監督が「プロデューサーがフィルムを修復してくれたので、20年ぶりに『クラッシュ』を観たんだが、ずっと笑いっぱなしだった。登場人物が異常だからね。セックスと車の事故で頭がいっぱいなんてイカれてるよ。制作当時、原作小説を紹介されて読み始めたんだが、20ページほど読んだところで嫌悪感が湧いたので読むのを止めたんだ。だけど最後まで読んだら、医学的な知識が盛り込まれた洗練された文章で、素晴らしい小説だと気づいた。ありのままを表現していて、風変わりでありながら医学的な官能性がある。いろんな意味でショックを受ける内容だった。それでも、まだ私が映画化するなんて考えもしなかったよ。だが、今でもなぜ自分でもそう言ったのか分からないが、原作者に『クラッシュ』を撮りたいと伝えたんだ。」と語っている。

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また「この小説で車は美しさや官能性の対象ではなく、反快楽主義的な視点で描かれている。ケネディ大統領が暗殺された時に乗っていた存在のように、車の恐ろしい破壊的な一面を表現しているんだ。だから車好きの為の作品ではないね。私が撮った『クラッシュ』には、原作の描写にはない美しさがあると思う。空間移動の美しさをカメラで捉えられたよ。道路を閉鎖して、夜の高速道路で撮影したシーンがあるが、途中で雨が降ってきたんだ。必要な時に降ってきてくれたおかげで、美しいシーンになった。しかし危険な場面になったよ。スタントは安全に配慮して行ったが、あの衝突はCGではないからね。」と言い、「この作品には同性同士の性描写があるため、出演交渉した多くの俳優がそのシーンを演じるのを拒否したんだ。だがジェームズ・スペイダーは見事に演じてくれたよ。妙なフィルターをかけず自分の中を解き放つのは、俳優にとって難しいことだろうけどね。私は俳優の演技に対する本能的な直観を大事にしたいと思っているんだ。」とインタビューに答えている。

 

作品としては、「ヴィデオドローム」「ザ・フライ」「戦慄の絆」「裸のランチ」などのデヴィッド・クローネンバーグ監督が手掛けた、サスペンス。イギリスのSF作家J・G・バラードの小説を映画化した作品だ。第49回カンヌ国際映画祭では、「審査委員特別賞」を受賞している。激しい性描写があるため、レーティングは「R18+」。製作25年を迎える2021年には、「4K無修正版」でリバイバル公開されており、本ブルーレイはそのパッケージ化である。出演は、「セックスと嘘とビデオテープ」のジェームズ・スペイダー、「ザ・ファーム 法律事務所」のホリー・ハンター、「サイレントヒル」のデボラ・カーラ・アンガー、「バッファロー’66」のロザンナ・アークエットなど。ジュリア・デュクルノー監督の「TITANE チタン」は、確実に本作の影響を受けていると思うし、カークラッシュによる倒錯的なフェチシズム描写や車内での男女を越えて行われる性行為の描写など、本作は今でも唯一有無の存在感を放っている作品だと思う。

 

 

監督:デヴィッド・クローネンバーグ
出演:ジェームズ・スペイダーデボラ・カーラ・アンガーホリー・ハンターロザンナ・アークエット
日本公開:1997年