映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は349本目。タイトルはフロリアン・ゼレール監督による、2021年日本公開作品「ファーザー」。特典映像としては「日本版予告編」「アンソニー・ホプキンス インタビュー」「オリヴィア・コールマン インタビュー」「フロリアン・ゼレール インタビュー」「クリストファー・ハンプトン インタビュー」で、計26分が収録されている。フロリアン・ゼレール監督インタビューでは「本作は認知症についてのストーリーだが、観客には自分事として観て欲しい。症状の一部を自分で体験しているような立場でね。本作のストーリーは迷路のようなもので、観客は出口を探さなければならないんだ。アンソニー・ホプキンスは老いと死について、深い知識があると思ったから採用した。老いを表現するのは勇気のいることだからね。彼のような役者が悲痛なプロセスを演じることに魅力を感じたんだ。キャストは映画にしては珍しく6人だけだ。そのうちの何人かは複数の役を演じるけどね。彼らを違う役で繰り返し登場させるのは、観客を戸惑わせるためだよ。エンディングは避けようのない人生のプロセスを表現している。人は老いて衰えると、子供に戻って親を求めるようになるんだ。受け入れがたいけれど、美しくて力強い感情だね。」と語っている。
主演のアンソニー・ホプキンスは「脚本が素晴らしく、キャストは少人数で、私の年齢も役に合っていた。演じるのは簡単だったね、苦も無く役柄が理解できたんだ。脚本が会話型なので、セリフの暗記は大変だったけどね。まるで痛みのない手術を受けている気分だった。自分の父親がこの役に似ていたから、父を思い出しながら演じただけだからね。フロリアン・ゼレールは映画監督は初めてなのに素晴らしい仕事ぶりだった。この役を演じて、自分自身の人生の終わりを意識するようになった。自分の”葉”を一枚ずつ失うのはどんな気分なんだろうかと考えて、人生の勉強になったね。でもまだ引退は考えていないよ。セリフの暗記は脳の活性化に繋がるからね。」と答えている。
作品としては、劇作家フローリアン・ゼレールの映画監督デビュー作であり、ゼレールが2012年に発表した戯曲を原作にしている。出演は「羊たちの沈黙」「ドラキュラ」のアンソニー・ホプキンス、「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマン、「グリーンルーム」「ビバリウム」のイモージェン・プーツなど。認知症によって過去の記憶と目の前の現実が曖昧になっていくという、高齢男性の混乱を描いている。監督が”当て書き”したという、主演のアンソニー・ホプキンスの演技がとにかく素晴らしく、スリリングなサスペンスとしても楽しめる快作だ。2023年3月には、フローリアン・ゼレール監督の長編二作目「The Son/息子」が公開されるのも楽しみだ。
監督:フロリアン・ゼレール
出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、イモージェン・プーツ、ルーファス・シーウェル
日本公開:2021年