映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイ購入記 ネタバレ&考察Vol.428:「最後の誘惑」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は428本目。タイトルはマーティン・スコセッシ監督による、1989年日本公開作品「最後の誘惑」。特典映像としては、「マーティン・スコセッシへのインタビュー」「オリジナル予告編」で、計15分が収録されている。マーティン・スコセッシ監督が「ずっと前から人間としてのイエスを映画で表現したかった。福音書とは異なる視点のものだ。私はパゾリーニ監督の『奇跡の丘』という映画に、とても感銘を受けたんだ。あの映画に触発されて『最後の誘惑』を撮ったんだよ。たとえ題材が同じでも4つの福音書があるように、解釈もそれぞれ異なる。72年に原作小説に出会ったんだが、フィクションとしてとても面白かったね。特に優れていた点はイエスの本質に神としてだけではなく、人間としての視点からも迫ったことだ。キリスト教史の最初の千年の間に行われた公会議によって、”イエスには神と人の二性が混じることなく存在する”と制定されたが、我々の持っているイエスのイメージは神としての側面ばかりだった。でも原作では誘惑や権力に苦しみ死を恐れる、人間としてのイエスを表現していたんだ。我々の苦悩をイエスも知ってるんだよ。」と言い、「この作品は個人的な視点で作られているから、ある意味で個人的な映画を作ったと言えるね。聖書を誤りだと信じてる人だって、聖書のすべてを否定はできないし、解釈や受け取りの問題もある。批判は覚悟の上だったが、驚いたし悲しかった。この映画は人々の信仰を揺るがすものではないよ。信仰はとても強いものだし、この映画は誰の信仰も傷つけないんだ。議論の発端になればいいんだよ。この映画で神をもっと身近に感じて、興味を持ってほしいんだ。」と語っている。

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作品としては、「グッドフェローズ」「ウルフ・オブ・ウォールストリート」「キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン」と、今も現役で傑作を撮り続けている巨匠マーティン・スコセッシが1988年(日本公開1989年)に発表した問題作。元々カトリックの司祭を目指していたスコセッシが、1970年代初頭から熱望していた企画であり、ギリシャの小説家ニコス・カザンザキスの「キリスト最後のこころみ」が原作となっている。脚本は「タクシードライバー」でもタッグを組んでおり、映画監督でもあるポール・シュレイダー。出演は「ストリート・オブ・ファイヤー」のウィレム・デフォー、「レザボア・ドッグス」のハーヴェイ・カイテル、「ブラック・スワン」のバーバラ・ハーシーなど。本作は1989年のアカデミー賞において「監督賞」にノミネートされているが、キリストが1人の人間としての欲求との狭間で悩むの姿を描いたゆえに、キリスト教右派からの猛烈な抗議と脅迫、さらには強烈な上映妨害を受けた作品としても有名である。マーティン・スコセッシの創作上の大きなテーマである、”キリスト教”そして”宗教観”を真っ向から扱った作品として、遠藤周作原作の「沈黙 -サイレンス-」に繋がっていく作品だとも言えるだろう。

 

 


監督:マーティン・スコセッシ

出演:ウィレム・デフォーハーヴェイ・カイテル、ヴァーナ・ブルーム、バーバラ・ハーシー

日本公開:1989年