映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイ購入記 ネタバレ&考察Vol.441:「夜」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は441本目。ミケランジェロ・アントニオーニ監督による、1962年日本公開作品「夜」特典映像としては、特に無し。出演は「死刑台のエレベーター」「突然炎のごとく」などのジャンヌ・モロー、「甘い生活」のマルチェロ・マストロヤンニ、「情事」「太陽はひとりぼっち」のモニカ・ヴィッティ、「パリ、テキサス」のベルンハルト・ヴィッキなど。作品としては「情事」「太陽はひとりぼっち」などの、ミケランジェロ・アントニオーニ監督による夫婦倦怠ドラマで、1961年ベルリン国際映画祭ではグランプリを獲得している。撮影は常にアントオーニ作品で組んでいるジャンニ・ディ・ヴェナンツォ、音楽はイタリア・ジャズ界の鬼才といわれるジョルジョ・ガスリーニがそれぞれ担当している。「情事」「太陽はひとりぼっち」とともに「愛の不毛三部作」として有名な作品で、愛が失われた倦怠期夫婦の残酷さを表現したミケランジェロ・アントニオーニ監督らしい一作だと言えるだろう。

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序盤はマルチェロ・マストロヤンニ演じる売れっ子作家ジョバンニと、ジャンヌ・モローが演じる妻リディアの上流階級夫婦が、重病の友人トマゾを見舞いに行ったことをきっかけに、夫婦のすれ違いが顕著になっていくという展開だ。特に妻リディアが一人でひたすら無機質な建物や、うら寂しい空き地を長々と歩き回るシーンは特徴的だが、全編を通じて彼女の空虚な内面を描きつつ、それと対となるように荒々しい若者たちの姿を表現したり、夫婦で訪れたナイトクラブではほとんど会話のない夫婦と対象的に、黒人女性ダンサーのアクロバティックな踊りを延々と映し出したりと、”静と動”の演出が面白い。一方で夫ジョバンニは、冒頭から病院で合った女性の誘惑に乗りそうになったり、大富豪の娘バレンチナの若く奔放な魅力に魅了されていったりと、女性に対して節操のない行動を繰り返す。そして妻リディアがトマゾの死を知ってしまったことにより、二人の溝はより深まっていくという物語だが、ラストシーンでリディアが取り出す”ある手紙”から、ミケランジェロ・アントニオーニ監督が描こうとした、「愛の不毛」の真の意味が分かる仕掛けになっている。あまりにペシミスティックな作品だが、各ショットの美しさは特筆すべき点だと思うし、「レボリューショナリー・ロード」や「ブルーバレンタイン」などの”倦怠期夫婦映画”の源流としても、十分に観る価値のある一作だと思う。

 

 

監督:ミケランジェロ・アントニオーニ
出演:ジャンヌ・モローマルチェロ・マストロヤンニモニカ・ヴィッティ、ベルンハルト・ヴィッキ
日本公開:1962年