映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は456本目。タイトルはベルナルド・ベルトルッチ監督による、1972年日本公開作品「暗殺の森」。特典映像としては「予告編」「フォトギャラリー」のみ。また遠山純生氏による60pの解説リーフレットが封入されている。オリジナル・ネガからの修復を行った「4K修復版」が2023年に発売されているが、今回の商品は「HDニューマスター版」。「ラストタンゴ・イン・パリ」「ラストエンペラー」「リトル・ブッダ」などで有名な、ベルナルド・ベルトルッチの脚本/監督による1970年製作・日本公開1972年の作品。1970年に開催された「ベルリン国際映画祭」のコンペティション部門に出品され、1971年度「アカデミー脚色賞」とゴールデングローブ賞「外国映画賞」にノミネートされている。弱冠29歳のベルナルド・ベルトルッチがその名を一躍世界に知らしめた傑作であり、日本で初めて紹介されたベルトルッチ監督作品だ。「1900年」にも出演しているドミニク・サンダが、日本において人気女優になるきっかけとなった映画でもある。
作品としては、「暗殺のオペラ」の製作準備中だった時期に、パラマウントの重役に”何か映画用のアイデアはないか?”と問いかけられたベルトリッチが、パートナーから聞いたばかりのアルベルト・モラヴィア原作「孤独な青年」のストーリーを語って聞かせた事がきっかけで作られた映画だが、実はその時、彼自身は原作小説を読んでいなかったらしい。その後製作が決まった為に小説を読み、1か月かけて単独で脚本化したという逸話が残っている。舞台は1930年代後半のローマ。中流家庭で育ち、少年期に異常な性体験をした青年マルチェロは、”正常な人生”を送ることを目指すようになる。それは彼にとってはすなわち家庭を持ってファシズムへ傾倒することで、彼は秘密警察の一員として、現在パリで亡命生活を送っている反ファシズムのクアドリ教授の暗殺を探る役割のためにパリへと赴く。だがそこで出会ったクアドリ教授の妻アンナにマルチェロは惹かれていくのだった、というストーリーだ。とにかく本作、初見では複雑な時系の操作が行われており、構成が非常に分かりづらい。これはベルトルッチが取り入れた映画版ならではの要素で、複数の時制を入れ替えているためだが、現在と過去を往来しながら主人公マルチェロの精神的葛藤を深堀しいく手法で、本作を語る上で特筆すべきポイントだろう。画角の隅々まで計算された画面構成など、イタリア映画界の巨匠ベルナルド・ベルトルッチ屈指の傑作の名にふさわしい作品だと思う。
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、ステファニア・サンドレッリ、ドミニク・サンダ、ガストーネ・モスキン、ピエール・クレマンティ
日本公開:1972年