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映画「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(FNAF)」ネタバレ考察&解説 ウェス・クレイヴンと「エルム街の悪夢」への愛あるオマージュに満ちた、有名ホラーゲームの映画化!

映画「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ(FNAF)」を観た。

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世界的ヒットを記録した同名ホラーゲームをあの「ブラムハウス・プロダクション」が映画化したホラー作品。北米および各国で公開されるやいなや初登場No.1を獲得した後、全世界でも累計興収2億8800万ドルという特大ヒットを飛ばし、なんとブラムハウス製作作品史上最高記録を樹立したというモンスター作品だ。そして本作の製作/脚本には、ゲームの原作者であるスコット・カーソンが参加していることでも話題となっている。出演は「センター・オブ・ジ・アース」「ハンガー・ゲーム」シリーズのジョシュ・ハッチャーソン、「カウントダウン」のエリザベス・レイル、「スクリーム」のマシュー・リラード、「フライド・グリーン・トマト」「ダニエル」のメアリー・スチュアート・マスターソンなど。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:エマ・タミ
出演:ジョシュ・ハッチャーソン、エリザベス・レイル、パイパー・ルビオ、メアリー・スチュアート・マスターソン、マシュー・リラード
日本公開:2024年

 

あらすじ

弟が謎の失踪を遂げ、事件の悲しい記憶から立ち直れずにいる青年マイク。妹アビーの親代わりとして生計を立てるため必死に仕事を探す彼は、廃墟となったレストラン「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」の夜間警備員として働くことに。「モニターを監視するだけ」という簡単な仕事のはずだったが、妹を連れて深夜勤務に就いたマイクは、かつてそのレストランの人気者だった機械仕掛けのマスコットたちが眼を怪しく光らせながら自ら動き出す姿を目撃。マスコットたちはかわいらしい姿から一転して凶暴化し、マイクや廃墟の侵入者を襲い始める。

 

 

感想&解説

原作は2014年にリリースされて以来、全世界で大ヒットしているホラーゲームで、ゲーム実況などでも多くの配信者がプレイしている事もあり、日本でも多くのファンを抱えているゲーム作品だ。しかもスピンオフも含めてシリーズ作も多く発表されており、世界中に熱心なファンがいるゲームの映画化である事を考えると、ブラムハウス・プロダクションのプレッシャーも相当なものがあったと想像できる。実際にジェイソン・ブラムは、これまで8人の監督が携わり15本の脚本が執筆されたことを明かしているが、映画化に向けて原作者スコット・カーソンと定期手にコンタクトを取り続け、とにかくゲームファンの期待を裏切らない作品を目指したらしい。個人的にはゲーム実況動画で”世界観”を把握しているくらいのライトユーザーだが、本作の映画化はかなり苦労したのではないだろうか。

ゲーム版の内容は、主人公のピザ屋の夜勤警備員が警備員室から店内にある監視カメラを通して監視しながら、徐々に部屋に接近してくるアニマトロニクス・マスコット達の侵入を防ぎ、朝の6時まで生き延びるというホラーゲームで、なんとプレイヤーは警備員室から動けないというシンプルなシステムのゲームだ。しかも太いストーリーラインがある訳ではなく、それゆえに大量のユーザー考察を生んでいるタイプの作品なのだが、この映画版は完全オリジナルのストーリーが採用されており、「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」という作品世界においては、非常に重要な映像化になっていると思う。それでもゲームファンから熱狂的に受け入れられているという事は、やはりブラムハウス・プロダクションとエマ・タミ監督の手腕が見事だったという事だろう。ゲーム版のファンが喜ぶ要素を随所に入れ込んでいることも、高評価のポイントのようだ。しかも完全にファンムービーとしてゲーム未体験者は楽しめない映画化なのかと言われれば、それが決してそうなっていないのもすごい。

 

ただし「シンプルに怖いホラー映画が観たい」という観客には向いていないだろう。予告編から感じるような、”お化け屋敷型”のジャンプスケア満載ホラー映画を想像すると、正直やや肩透かしを食うと思う。いわゆるゴア要素もかなり少なめで、ホラー初心者でも観やすい作品になっているのである。ただし、だからといって子供向けという訳では決してない。本作の中心を貫くテーマは、”悲しみと後悔からのトラウマ”という重いものだからだ。主人公マイクは、幼いころ目の前で弟を連れ去られるというトラウマを引きずっており、それ以来過去に縛られて生きている。最近もショッピングモール警備員の職を失い、キャリア・コンサルタントの男から、80年代に流行ったものの今は廃墟と化したレストラン「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」での夜間警備の仕事を紹介されるが、一度は断ってしまう。だが妹アビーの親権を守るために絶対に仕事が必要となり、遂には夜警の仕事を受けることになる、というのがこの映画の導入部だ。

 

 

ここからこのレストランの中で、恐ろしいマスコット達に襲われながらも必死に生き延びる作品なのかと思いきや、その予想は良い方へと裏切られる。ここからネタバレになるが、本作において主人公マイクの見る”夢”が大きなポイントとなってくるのだが、この夢の中で起こった事象が実際の現実にも影響してきて、マイクは夢と現実の世界を行き来するようになる。マイクは睡眠薬を飲みながら、弟ギャレットが誘拐された現場の夢を何度も見ることで犯人の痕跡を探しているのだ。そしてその夢の中で出会う少年たちと会話を交わし、彼らに攻撃されると現実世界でも怪我をしたりする。そしてこの世界観は、映画ファンにはお馴染みのウェス・クレイヴン監督「エルム街の悪夢」を強く想起させるのだ。本作のアニマトロニクス・マスコットの主犯が「フレディ」という名前だったり、80年代の寂れたピザ・レストランが舞台であったりというのも、「エルム街の悪夢」が84年公開の作品であることを考えると偶然ではないだろう。そもそもゲーム原作者のスコット・カーソンが「エルム街の悪夢」からインスパイアされてゲームの設定を作ったのかもしれないが、この映画版では更にその設定がストーリー上で活かされているため、スコット・カーソンが映画版の脚本を作るにあたって追加した要素なのではないだろうか。ちなみにゲーム版の「4」では、この”悪夢”が作品のキーワードになっている。

 

またこの映画版は演出が本当に巧い。マイクが「フレディ・ファズベアーズ・ピザ」で働き始めるまでの過程についても、このままでは叔母のジェーンにアビーの親権を引き取られてしまうという事で、こんな条件の悪い夜警を始めるという動機にも違和感がないし、この叔母が雇っているベビーシッターや男たちがマイクを追い込む為にレストランを襲うという流れの中で、アニマトロニクス・マスコット達の狂暴性を描いておくのもこの先の展開から考えてスムーズだ。また序盤に登場するキャリア・コンサルタントの男の描写が、初見からでも微妙に違和感があるように描写されているのも見事で、ここで引っ掛かりを作っておくことで後半のマスクを取った時のインパクトを作ると同時に、「なるほど」という説得力が増している。しかもこの真犯人役の俳優がやはりウェス・クレイブン監督「スクリーム」一作目で、犯人役だったマシュー・リラードが演じているのも、ホラー映画ファンには嬉しいサプライズになっていると言えるだろう。ウェス・クレイブンの2大代表作といえば「エルム街の悪夢」と「スクリーム」なので、ここでもシンクロしてくるのである。

 

「過去はどうでも良い。これから俺は変わるんだ。」というのは、夢の中で弟ギャレットと引き換えにアビーを差し出すという選択を後悔したマイクが謝罪と妹アビーに告げるセリフだ。このセリフがあるお陰で、本作のメッセージがより明確になっていると思う。弟ギャレットをさらわれたという過去のトラウマから解放されこれからはアビーと共に生きていくという、これはマイクからの宣言であり表明だからだ。そして女性警官であるヴァネッサの父親ウィリアム・アフトンが、子供たちを誘拐していた真犯人の「黄色のうさぎ」であることが判明し、アビーの”絵を描く力”によって彼はフレディたちに復讐される。この”絵を描く力=クリエイティブな力”によって悪が倒されるという展開も、今まで低予算映画で次々と高収益を叩き出してきたブラムハウス・プロダクションとインディーズゲームクリエイタースコット・カーソンのコンビらしい展開と言えるだろう。序盤にもアビーの「絵の力」については伏線が張られており、こういう細かい演出のひとつひとつが本作を魅力的にしていると感じる。

 

実際にアニマトロニクスで作られたクリーチャーはCGではない魅力が出ていたし、中盤のアビーと游んだ後に抱き合うフレディの愛らしさなども間違いなく本作の良さだと思う。ラストの展開からも示唆されていたが、本作の大ヒットを受けて続編の製作も既に決定しているらしい。正直ホラー映画としてはほとんど怖くないし、モンスター映画としてクリーチャーもそれほど大暴れしない。さらにストーリー自体も地味な展開だし既視感も強いのだが、本作には作り手たちの強い”ブラッシュアップ力”が感じられるのである。一本の映画作品として、カット割りや編集に至るまで、推敲に推敲を重ねた感じで手を抜いたシーンが存在しない。セリフ回しまで含めてバランスの良さが感じられるのだ。本作の監督エマ・タミの初監督作品だと思うが、ぜひ続編の監督も担当してほしいと思う。映画版「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」は原作のゲームファンだけでなく、映画ファンにも広くアピールできる作品になっていたし、特に80年代ホラーファンにはオススメしたい愛らしい一作だった。

 

 

7.0点(10点満点)