映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイ購入記 ネタバレ&考察Vol.470:「エル」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は470本目。タイトルはルイス・ブニュエル監督による、1987年日本公開(本国1952年制作)作品「エル」。特典映像としては特にないが、特別なリーフレットが封入されていて、映画評論家の遠山純生氏と四方田犬彦氏によるエッセイが寄稿されている。監督は、「アンダルシアの犬」「哀しみのトリスターナ」「皆殺しの天使」「欲望のあいまいな対象」などで有名なルイス・ブニュエル。1953年の第6回カンヌ国際映画祭出品作品だ。ルイス・ブニュエルはフランスで「昼顔」「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」、スペインで「ビリディアナ」、メキシコで「皆殺しの天使」などの映画を制作し生涯に32作品を監督したが、本作「エル」はメキシコ時代の作品で、ブニュエルフィルモグラフィーの中でも最高傑作という声も多い映画だ。そして本商品は、初の日本ブルーレイ化となっている。

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作品としては、敬虔なカトリック信者で品行方正、四十過ぎても未だ童貞というフランシスコはある日、教会で会った美脚の持ち主グロリアにひと目惚れし、婚約者がいるのも構わず強引に破棄させて彼女と結婚する。しかし彼は異常な嫉妬心の持ち主で、彼女に少しでも関わる全ての男の行動と彼女の不貞を疑うのだったというストーリーで今の言葉で言うなら、いわゆる”偏執的(パラノイア)なモラハラ男”を描いている。フランシスコの社会的な地位の高さから、ヒロインであるグロリアの発言が神父や実の母親にすら信じてもらえず、彼女がどんどんと孤立していく姿は恐怖以外の何物でもなく、まるでヒッチコック映画のようなサスペンスフルな面白さがある。ただフランシスコが歩いているのをバックショットで捉えただけの有名なラストシーンも含めて、50年代前半にこれほどパラノイアをリアルに描いた作品は驚きだし、ルイス・ブニュエル監督による映画史に残る傑作なのは間違いない。いわゆるサイコスリラーのジャンルにおける、後世の作品にも大きな影響を与えた一本だろう。

 

監督:ルイス・ブニュエル
出演:アルトゥーロ・デ・コルドバ、デリア・ガルセス、ルイス・ベリスタイン、アウロラ・ワルケル
日本公開:1987年(1952年製作)