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映画「アリータ:バトル・エンジェル」ネタバレ感想&解説

アリータ:バトル・エンジェル」を観た。

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90年代日本発のコミック「銃夢(ガンム)」を原作に、「アバター」のジェームズ・キャメロンが脚本と製作を手掛けて実写化したSFアクション。監督は「シン・シティ」や「スパイ・キッズ」のロバート・ロドリゲス。元々はキャメロン本人が監督もする予定だったらしいが、「アバター」の続編を撮影中ということもあり、今回ロバート・ロドリゲスにバトンタッチしたらしい。本当なら2018年に公開される予定だったが、二度の延期を経てやっと公開の運びとなった。とにかく劇場で予告編を見過ぎていて、正直食傷ぎみではあったが、今回レイトショーで鑑賞。原作は未読である。ネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:ロバート・ロドリゲス

出演:ローサ・サラザールクリストフ・ヴァルツジェニファー・コネリー

日本公開:2019年

 

あらすじ

数百年後の未来。スクラップの山の中から奇跡的に脳だけが無傷の状態で発見されたサイボーグの少女アリータは、サイバー医師のイド博士によって新たな体を与えられ、目を覚ます。しかし彼女は、自分の過去や今いる世界についてなど、一切の記憶が失われていた。やがてアリータは、自分が300年前に失われたはずの最終兵器として作られたことを知り、そんな兵器としての彼女を破壊するため、次々と凶悪な殺人サイボーグが送り込まれてくる。アリータは、あどけない少女の外見とは裏腹の驚異的な格闘スキルをもって、迫り来る敵たちを圧倒していく。

 

感想&解説

予告編を初めて観た時の「なんかすごい目がデカくて、違和感のあるキャラクターデザインだなぁ」というイメージは、映画が始まって10分くらいすると段々と慣れてくる。それどころか「目は心の窓」とはよく言ったもので、このデカい目のアリータというキャラクターがコロコロと変える表情に、むしろ愛着すら湧くようになる。これはパフォーマンス・キャプチャーを使って、役者が演じた映像にVFXを加工したCGキャラに抱く感情としては、かなり異例だと思う。それだけ人間の役者に近い感情表現が、デジタルキャラクターにも出来るようになってきているのだろう。特に何かを食べるようなシーンが顕著で、まったく違和感なく、かつ愛嬌のあるキャラとしてアリータはスクリーンに存在している。まずそれは賞賛に値するし、この映画の価値を大きく上げていると思う。


また今回、作品を観てみて、改めてこれはジェームズ・キャメロンの映画だなぁと強く感じた。むしろロバート・ロドリゲスはかなり職人監督に徹して、自分の個性を殺したのではないかとすら想像してしまう。肉体的にも圧倒的に強靭で意志も強く、献身的でブレない女性キャラは、リプリーやサラ・コナーを筆頭にキャメロン映画の重要なアイコンだが、本作のアリータも同じ系譜と言えるだろう。だからこそ、彼は原作の「銃夢」に惹かれたのかもしれないが、とにかく愛する者の為に文字通り身体を投げ打って戦う姿は、清々しささえ感じる。物語の終盤、自分の心臓のパーツは高く売れるからそれを売って男の夢を叶えようと提案するアリータは、もはやメロドラマや演歌の主人公のようである。とにかく、彼女の行動理由が明確で献身的なキャラクターの為、好意的に観られるのである。


また本作アリータは、銃による戦闘をしない。ほとんどが接近戦による格闘か、剣(ブレード)による戦闘で、このあたりも彼女の身体的な能力を際立たせつつ、動きのあるアクションシーンを魅せる上手い作りになっていると感じた。またサイボーグという設定を活かしていて、ほとんど身体が引き千切られていても最終的には死にはしないという、ある意味での不死身感は、死に対する「恐怖」や「悲壮感」を消しており、これによりカラッとした娯楽アクション映画として、老若男女が楽しめる作品になっていると思う。


ただ、最近の大作アクション映画の傾向として本作も御多分に洩れず、アクションシークエンスの派手さに比べて、ストーリーや世界観の既視感は如何ともしがたい。上位層と下位層に分かれている世界、モーターボールと言われるデスゲーム的な競技に熱中する市民たち、上位層の悪玉にコントロールされている下位層の中ボスなど、過去のSF作品で観たことある設定ばかりで新しい要素は少ないと言える。もちろん原作がそうだからというのは重々承知だが、それにしてもあまりに先の読めるストーリーには萎えてしまった。

 

また世界観の掘り下げも浅く、過去アリータが参加していた戦争とは何なのか?世界は何故上下に分かれて、それぞれどんな統治がされているのか?何故、モーターボールで優勝すれば上の世界に行けるのか?そもそもモーターボールの試合における勝利の条件とは?など、今作を観る限りは全く分からない。また続編ありきの展開も頂けない。ラストで、ノヴァという大ボス的なキャラクターが登場し、それをエドワード・ノートンが演じていた事がわかる。大物俳優が登場して映画が終わり、さらに続編が示唆されるのだが、このパターンも何回観たかわからない。最初からシリーズものを謳っていれば別だが、出来れば単独作品としてしっかり完結してから、続編を作って欲しいと思ってしまう。


とはいえ、「アリータ:バトル・エンジェル」は、キャラクターも魅力的で、有象無象のSF作品とは一線を画すジェームズ・キャメロン的な超大作だと思う。むしろ、普段あまり映画を観ないような客層の方が、先入観無しに楽しめるかもしれない。どのみちこの手の映画は、映画館で観てこそ価値があると思うし、IMAXや3D上映とも相性が良いだろう。難しい事を考えないで「映像を楽しむ」という意味では、先日公開された「アクアマン」と並んで、最高のアトラクションムービーだろう。

採点:4.5(10点満点)

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