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映画「THE BATMAN ザ・バットマン」ネタバレ感想&解説 いくら何でも画面が暗すぎる新バットマン!ストーリーが解りづらい、グランジ・ロックな一作!

「THE BATMAN ザ・バットマン」を観た。

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1966年「バットマン/オリジナル・ムービー」から始まり、1989年からのティム・バートン版2作、95年からのジョエル・シューマカー版2作、2005年からのクリストファー・ノーラン監督「ダークナイト」3部作トリロジーと、今まで幾度も映画化されてきたDCコミックスの人気キャラクター「バットマン」の再映画化。監督は「クローバーフィールド/HAKAISHA」「猿の惑星:新世紀ライジング)」のマット・リーブス。主演は「トワイライト」「TENET テネット」ロバート・パティンソンで、共演はミュージシャンのレニー・クラビッツの実娘であり、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」などにも出演していたゾーイ・クラビッツ、「ブロークン・フラワーズ」「007 カジノ・ロワイヤルジェフリー・ライト、「リトル・ミス・サンシャイン」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッドポール・ダノ、「ロード・オブ・ザ・リング」3部作のアンディ・サーキスなど。176分という長尺も話題の作品であるが、出来はどうだったか?今回もネタバレありで感想を書いていきたい。


監督:マット・リーブス

出演:ロバート・パティンソン、ゾーイ・クラビッツ、ジェフリー・ライトポール・ダノアンディ・サーキスコリン・ファレル

日本公開:2022年

 

あらすじ

両親を殺された過去を持つ青年ブルースは復讐を誓い、夜になると黒いマスクで素顔を隠し、犯罪者を見つけては力でねじ伏せる「バットマン」となって活動していた。ブルースがバットマンとして悪と対峙するようになって2年目になったある日、権力者を標的とした連続殺人事件が発生。史上最狂の知能犯リドラーが犯人として名乗りを上げる。リドラーは犯行の際、必ず「なぞなぞ」を残し、警察やブルースを挑発する。やがて権力者たちの陰謀やブルースにまつわる過去、ブルースの亡き父が犯した罪が暴かれていく。

 

パンフレット

価格900円、表1表4込みで全44p構成。

大型オールカラー。マットな手さわりの表紙で、非常にクオリティ高い。ロバート・パティンソン/ゾーイ・クラビッツを含むキャスト陣へのインタビュー、マット・リーブス監督のインタビュー、作家の佐藤究氏、漫画家の麻宮騎亜氏、映画ジャーナリストの立田敦子氏、映画評論家の尾崎一男氏のレビュー、プロダクションノートなどが掲載されている。

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感想&解説

映画が始まってしばらくは、あまりの画面の暗さに自分の目が疲れてるのかと思い、何度もまばたきしてしまった。それくらいに本作は画面が暗く、登場人物の表情すらも見えづらい。こんなに画面の暗い映画はちょっと記憶にない位だ。ほとんどが夜と雨のシーンで構成されていて、まるでデビッド・フィンチャー作品を彷彿とさせるというレビューを読んだのだが、個人的にはやや違う感想を持った。フィンチャー作品の画面は、彩度のコントロールVFXを駆使し、夜のシーンでも「観せる部分は観せる」という感じで、ショットとしてメリハリがあったのに対して、今回の「THE BATMAN ザ・バットマン」はずっと全体が暗い。圧倒的に暗めのシーンが多く、それが約3時間続くのでトーンが一定になり、正直メリハリという意味では希薄だと感じる。

ロバート・パティンソン演じる今回のブルース・ウェインは「カート・コバーン」を意識しているらしいが、序盤からニルヴァーナの「Something in the Way」がかかり、なるほど本作はまるで90年代「グランジ・ロック」のアルバムのようだ。「汚れた」とか「薄汚い」という言葉が語源の”グランジ”だが、代表的なのは「ニルヴァーナ」や「パール・ジャム」、「ダイナソーJr」といったアーティストで、ヘビーなリフや歪んだギターサウンド、ダークで退廃的な歌詞やアートワークが特徴的なロックジャンルだが、個人的には本作はパール・ジャムの3rdアルバム「Vitalogy」を思い出した。お互いに反目しながらも最終的に和解した、「パール・ジャム」のボーカリストエディ・ヴェダーカート・コバーンそのカートが自殺した後にリリースされたアルバムという事もあり、一聴すると地味で暗いアルバムなのだが聴きこむほどに美しさに気付くタイプの作品だ。恐らく本作「THE BATMAN ザ・バットマン」は、クリストファー・ノーラン監督「ダークナイト」のようなキャッチーさは無いため、かなり好みが分かれる作品だと思う。バランスとして”歪んだ映画”だからだ。


まずストーリーがわかりづらい。バットマンが自警しているゴッサムシティで、市長であるドンがテープで顔も身体もぐるぐる巻きにされ、”LIES”という血文字を書かれて息絶えているシーンから物語が動き出すのだが、ズブ濡れのバットマンが殺人現場でウロウロできるのは何故か?ゴードン警部はバットマンを守っているようだが、二人はどういう関係なのか?も特に説明はないし、その後、USBメモリーの中のペンギンの写真からセリーナに出会い、コルソン検事が拉致されるが殺され、と何がなにやら解らないままストーリーはドンドンと進んでいく。振り返ってみると、「ペンギンって何のために出てきたんだっけ?」とか、「結局リドリーの作戦ってほとんど成功しているけど、バットマンってラスト以外活躍してたっけ?」とか、とにかく「全員悪人」の世界観の中で、各キャラクターが派手だったり美麗なシーンを繰り広げているのは解るのだが、ストーリー自体の納得度と推進力は低いと思う。

 


また、そもそも本作は「バットマン」の源流である”探偵もの”として描いた作品らしいが、この謎解きがあまり面白くない。ミステリーの謎解きではなく、あくまでもテーマとして扱っているだけなので、「ロジック」で観客を楽しませるものではないからだ。しかもアンディ・サーキスが演じる「アルフレッド」には期待していたのだが存在が薄いし、キャットウーマンのコスチュームはこそ泥の”ほっかむり”みたいだ。一見善悪で分れているように見えるバットマンリドラーは、世の中の悪を粛清するという動機としてはほぼ同一の存在で、「互いが抱えている闇」が対決するという主題自体は面白いし、ある程度高い水準で映画は進むのだが、この作品ならではの”突出して印象に残るシーン”がないのである。ここはやはりヒース・レジャー演じる「ジョーカー」という突出した存在がいた、ノーラン監督の「ダークナイト」には圧倒的に劣る。ここからネタバレになるが、ポール・ダノ演じるリドラーが逮捕された後、爆破によって洪水が起こし逃げるゴッサムシティの住人を銃殺するために、リドラーの邪悪な意志を引き継いだ一般人が集まるという終盤の展開も、やはり盛り上がらない。一般人にバットマンが負けるわけがないと思うし、多分キャットウーマンが助けにくるだろうなと思ったら、本当に来るためスリルもない。176分という長尺の割には最後までテンションが上がらないままにエンディングを迎えてしまうのだ。では「駄作か?」と言われると、そこまで悪くはないという困った感想になってしまうのが悩ましい。


ただこの作品で一点、バットマンキャットウーマンの殺しを止めたり最後に人命救助を行うシーンは、”ヒーロー映画”として非常に良い。そもそもダークヒーローとして精神的な危うさがあるキャラクターのために、この正義の行動は「ギャップ」として素直に感動できる。また暗いながらも、所々で表現される”アクションシーンの美しさ”はこの作品の美点だろう。冒頭の双眼鏡で向かいのビルを覗き見るシーンは、マット・リーブス監督の長編2作目「モールス」における、少年オーウェンの覗きシーンを思い出す。ぼくのエリ 200歳の少女」のリメイク作ながらも、ヴァンパイアをテーマにした作品だけに夜の撮影が非常に美しかったのだが、本作はそれをさらにダーク&ヘヴィにしたイメージなのかもしれない。世界中で大ヒットしているらしいし、ラストでジョーカーが登場する場面もあるので間違いなく続編は作られるのだろうが、世間の評価に反して個人的には、あまり手放しでは絶賛できない作品であった。作品の雰囲気は抜群に良いし、決してつまらない映画ではないのだが、脚本に難がある気がする。最後にエンドクレジットを観て、「どこにコリン・ファレルが出ていたんだ?」と多くの方が思ったのと同じ感想を抱いたことは、追記しておきたい。

6.0点(10点満点)