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映画「2分の1の魔法」ネタバレなし感想&解説

「2分の1の魔法」を観た。

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新型コロナウィルスの影響が映画業界にも広がり、子供向け作品を中心に公開延期の作品が増えてきている。本作「2分の1の魔法」もピクサー・アニメーション・スタジオ制作、ディズニー配給で当初3月13日公開だったが延期となってしまい、現在は公開日未定となっている。今回は一足先に試写会にて鑑賞させて頂いたので、その感想をネタバレ無しで書きたい。ピクサー作品としては22作目、続編ではないオリジナル作品としては「リメンバー・ミー」以来の3年ぶりとなる。監督は「モンスターズ・ユニバーシティ」のダン・スキャンロン。英語版の声優はトム・ホランドクリス・プラットという豪華ぶりで、日本版声優も志尊淳と城田優が勤める。今回はネタバレなしで。

 

監督:ダン・スキャンロン

出演:トム・ホランドクリス・プラット、志尊淳、城田優

日本公開:2020年

 

あらすじ

かつては魔法に満ちていたが、科学技術の進歩にともない魔法が忘れ去られてしまった世界。家族思いで優しいが、なにをやってもうまくいかない少年イアンには、隠れた魔法の才能があった。そんなイアンの願いは、自分が生まれる前に亡くなってしまった父親に一目会うこと。16歳の誕生日に、亡き父が母に託した魔法の杖とともに、「父を24時間だけよみがえらせる魔法」を手にしたイアンは早速その魔法を試すが、父を半身だけの姿で復活させてしまう。イアンは好奇心旺盛な兄バーリーとともに、父を完全によみがえらせる魔法石を探す旅に出る。

 

感想&解説

ピクサー作品のクオリティの高さを今更改めて書くまでもないだろうが、本作もピクサーが今まで培ってきた、いわゆる「完成されたストーリーテリング」を存分に味わえる作品となっている。今回は、男同士の「兄弟」というテーマでストーリーは進行していくが、本作を観ながら思い出したのは、昨年大ヒットした女同士「姉妹の絆」を描く「アナと雪の女王」シリーズであった。この造りは作り手もおそらく意識的だろう。


ストーリーとしては、非常にシンプルな構造で子供でも分かりやすい作りになっているが、それでも最後は泣かされてしまうのが、さすがのピクサークオリティだ。舞台としては、かつて魔法が世の中にあふれていた世界だが、今は科学技術の進歩が進み魔法の力が廃れたファンタジーの世界。妖精やペガサスが街に普通に存在するが、彼らの存在価値は地に堕ちている。主人公のイアンと兄のバーリーは幼いころに父親を亡くしていたが、今は母親と仲良く暮らしている。イアンが16歳の誕生日、母親から父の残した魔法の杖を渡され、父親を24時間だけ復活させる魔法をかけるが、下半身だけが復活してしまう。そこでどうしても父親ともう一度会いたいイアンとバーリーは残りの半身も復活させるために、下半身だけの父と復活させる宝石を求めて冒険の旅に出る、というのがおおまかなプロットだ。


本作のターゲットには「ハリーポッター」シリーズのファンも想定しているそうだが、確かにそれを意識しているかのような楽しい魔法シーンも多々あるし、カーアクションやコメディ要素もバランスよく配置されている。内気でおとなしいが魔法を通じて成長する弟のイアンと、破天荒で行動的だが弟想いの兄バーリーのデコボコバディムービーとして、彼らの辿ってきた冒険自体がラストの感動に向けた大きな伏線として活きてくるという作りも非常に上手い。また24時間以内に半身を復活させないといけないというタイムリミットサスペンスの要素もあり、本作のストーリーに見事な緊張感を生んでいる。冒険の終盤、時間切れが濃厚になり、思わず仲違いをしてしまう兄弟だがイアンはあるきっかけで、冒険の間に「兄と一緒に過ごした時間」という価値に気づく。父親の喪失を前に、実は兄が担ってくれていた存在の大きさに気づき、イアンは成長するのだが、この後の展開は実際に兄弟のいる方であれば号泣必至だろう。


ツイストの効いた驚きの展開とは言えないが、シンプルで力強い王道の展開で、エンドクレジットの後には爽やかな気持ちで劇場を後に出来るストーリーであることは間違いない。2017年のオリジナルストーリー「リメンバー・ミー」の家族愛と、「アナと雪の女王」の兄弟愛をミックスさせたようなピクサー&ディズニーのハイブリットな作品だった本作は、CGの完成度に目を見張るというよりは、改めてピクサーという会社の「物語を紡ぐ」という類稀な能力を思い知らされる映画だったと思う。老若男女誰が観てもある程度満足出来る、ファミリームービーの良作なので、今回のコロナ騒ぎが終息して、一日でも早く日本公開されることを願いたい。


採点:6.5点(10点満点)