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映画「ワンダーウーマン 1984」ネタバレ感想&解説 意外と露骨に政治的なメッセージを含んだ(?)、アクション大作の続編!

ワンダーウーマン 1984」を観た。

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DCコミックスの女性ヒーローである「ワンダーウーマン」の3年ぶりの続編が公開となった。前作ではワンダーウーマンの誕生と活躍を描き、世界興行収益800億という大ヒットとなった作品だったが、主人公を演じたガル・ガドットの魅力に溢れたヒーロー映画だった。監督は前作から続投のパティ・ジェンキンス監督。主人公ダイアナも、もちろんガル・ガドットが演じている。さらに前作で死んだはずのクリス・パイン演じる、スティーブも再登場する。今回もネタバレありで感想を書きたい。

 

監督:パティ・ジェンキンス

出演:ガル・ガドットクリス・パインクリステン・ウィグ

日本公開:2020年

 

あらすじ

スミソニアン博物館で働く考古学者のダイアナには、幼い頃から厳しい戦闘訓練を受け、ヒーロー界最強とも言われるスーパーパワーを秘めた戦士ワンダーウーマンという、もうひとつの顔があった。1984年、人々の欲望をかなえると声高にうたう実業家マックスの巨大な陰謀と、正体不明の敵チーターの出現により、最強といわれるワンダーウーマンが絶体絶命の危機に陥る。

 

感想&解説

軒並み公開が延期になっている中で、2020年に公開された数少ない大作作品だと思う。特にマーベル系はすべて見送られている事を考えると、DCコミックス系譜の本作はいわゆるアメコミ作品としては、コロナ禍以降で唯一の公開作だ。今回劇場で鑑賞してみて、なるほど、本作は来年にずらしての公開は厳しい作品だと納得した。そもそもは2020年6月公開予定だったので、まるっと半年ズレているのだが、本来はアメリカ大統領選挙の前に公開したかった作品なのだろう。まったく前知識を持たずに鑑賞したが、今回の悪役であるマックスという男があまりにドナルド・トランプを意識した設定で笑ってしまった。


本作は前作のような純粋なアクションヒーロー映画というよりは、様々な映画ジャンルから少しずつ要素を組み合わせたような作品になっており、いわゆる純粋な”アクション映画”を期待していると肩透かしを食うかもしれない。正直、前作が好きだった方には特に不評だろう。本作が「ワンダーウーマン2」ではなく、1984」というタイトルなのも”単純な続編ではない”という監督からのメッセージだと感じる。特に恋愛要素が強く、中盤にパイロットのスティーブと戦闘機に乗って花火の中を飛ぶシーンなどは、ロマンティックで1978年のリチャード・ドナー監督「スーパーマン」の夜空の飛行シーンを思い出した。ラブコメによくある衣装の着替えで笑わせるシーンなどもあり、前半~中盤はやや軽めの展開が続く。恋するダイアナがとにかく嬉しそうなのである。


舞台はタイトルどおり1984年。前作が第一次世界大戦中だったことを考えると、かなり時間が経っているがこの年代設定も重要で、核を抑止力とする米ソ冷戦状態や、経済成長期の消費主義&拝金主義を時代背景に、マックスという成り上がりのビジネスマンが大統領を超える権力を手に入れ、取りつかれていく様子が描かれる。これを叶えるのが「夢の石」というアイテムで、この石を握って望みを唱えれば何でも叶ってしまうという設定だ。ただ、この石に望みを叶えてもらうと「代償」が必要になり、大事なものを失ってしまう。ダイアナはこの石に祈ることで、スティーブを生き返らせるのだが、そのかわり彼女の”超人的な力”が失われてしまう。世界を救うには力を取り戻す必要があるが、大事なスティーブを再び失う事になり、ダイアナは葛藤するのである。この設定にしたおかげで、完全にインフレ気味だったワンダーウーマンの力が弱まり、過去作では無敵でやりたい放題だったアクションシーンに、抑揚がついたのは良かったと思う。


ここからネタバレになるが、終盤に向けて、世界の為に自己の幸せを犠牲にして、力を取り戻すというカタルシスも生まれドラマも生まれる。個人的に本作でもっとも良かったのは、ラストシーンだ。マックスがアメリカ大統領の「核兵器をもっと持ち世界の頂点に立ちたい」という希望を叶え、ソ連もそれに対抗することで一触即発になった世界。国民は大混乱しているが、マックスは放送局を占拠し、さらに皆の希望を叶えてやると訴える。「有名になりたい」「金持ちになりたい」と利己的な希望を訴える国民に対して、ワンダーウーマンは世界を救うのは、"一人一人の善意"と"真実を見ること"だと諭す。従来のヒーロー映画のように、目の前の敵に対しての単純な暴力だけで解決とはしないのだ。


世界中の利己的な希望を叶えることで"代償"を得る男と対峙した、このワンダーウーマンの世界への発言はいったい何を指すのか?監督のパティ・ジェンキンスは本作に対し政治的な意図はないと発言しているが、本作の悪役がトランプに似せていることは明白であることを考えると、意味深だ。そして市民たちが我にかえることで、マックスは力を失う。更に息子を救う事で最終的に改心した彼は、「パパは嘘をついていた。自分は偉大な男では無かった。もう一度、お前に愛してもらえるように努力する」と息子を抱きしめるのだ。大きな権力に取り憑かれた男が一人の父親に戻る姿には、監督からの意図的なメッセージが含まれているとしか思えない。このラストシーンが本作を過去のヒーローアクション映画と一線を画す作品にしているし、感動を呼ぶのだ。


もちろん、この「夢の石」という設定からもわかるように、ストーリーはご都合主義すぎて決して褒められたものではない。上映時間も151分と長いため若干中だるみするし、アクションシーンも予告編以上の見どころはなかった。ただ、パティ・ジェンキンスという女性監督ならではの視点で、今までのヒーローアクションと差別化された作品になっていたことは間違いない。エンドクレジットで登場する、アステリアというキャラクターは、初代ワンダーウーマンを演じていたリンダ・カーターらしいが、こういうサービス精神も嬉しい。本作のようなエンターテイメント大作が劇場で観られたこと自体、個人的には大いに価値があった。

採点:6.0点(10点満点)