映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は500本目。タイトルはアンディ・ウォシャウスキー&ラリー・ウォシャウスキー監督による、1997年日本公開作品「バウンド」。特典映像としては「劇場版予告編」のみ。「マトリックス」「スピード・レーサー」「クラウド アトラス」など話題作を送り出してきた、ウォシャウスキー兄弟の長編監督デビュー作。出演は「フェイス/オフ」「ドリヴン」などで、最近でもイーライ・ロス監督の「サンクスギビング」に出演していたジーナ・ガーション、「ブロードウェイと銃弾」「ライアー ライアー」のジェニファー・ティリー、「バッドボーイズ」「メメント」などのジョー・パントリアーノなど。映画史上に燦然と輝く傑作「マトリックス」の前に、ウォシャウスキー監督が手掛けたデビュー作だが、改めて鑑賞すると監督の作家性がしっかりと刻印された作品だと思う。
作品としては、マフィアの金を奪って逃走しようとする盗みのプロと、マフィアの情婦という二人の女性を描いたクライム・サスペンスなのだが、先の読めないシナリオも魅力的ながら、カメラが電話線をクルッと追いかけて電話が映ったと同時に鳴りだしたり、壁が薄いという伏線からの隣同士の音が水道管やトイレから聴こえてくるという演出、頭上からの捉えるカメラワークなど”映像作品”として凝っていて飽きない。低予算映画なので密室での会話が中心の作劇だが、監督のスタイリッシュな映像意識によって見事にサスペンスを盛り上げている。ただジーナ・ガーションとジェニファー・ティリーの女同士によるラブシーンが必要以上に濃厚で、いかにも90年代っぽい雰囲気を醸しているが、これも本作のテイストのひとつなのだろう。デビュー作には監督の総てがあるとよく言われるが、本作のビジュアルセンスとストーリーテリングの巧さに、「攻殻機動隊」から影響されたSF要素が加わったのが「マトリックス」なのだと思う。監督のフィルモグラフィーとして、「クラウド アトラス」や「ジュピター」といったSFアクションが多い傾向だが、こういうノワールサスペンスももう一度撮ってほしいと思わされる佳作だ。
監督:アンディ・ウォシャウスキー&ラリー・ウォシャウスキー
出演:ジェニファー・ティリー、ジーナ・ガーション、ジョー・パントリアーノ、ジョン・P・ライアン
日本公開:1997年