映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は499本目。タイトルはジェームズ・グレイ監督による、2019年日本公開作品「アド・アストラ」。特典映像としては、「未公開シーン集(ジェームズ・グレイ監督による音声解説付き)」「星の彼方へ」「ロイという男」「ケフェウス号のクルーたち」「スタッフたちの仕事」「地球外へと向かう人類」「予告編集」で、計53分が収録されている。各メイキング映像では、ジェームズ・グレイ監督が「”もし誰かが宇宙で危険な実験をしていたら?”と考えたんだ。タイトルの『アド・アストラ』とは”星の彼方へ”という意味で、由来であるラテン語の格言は”困難を経て星の彼方へ”と言い、実に美しい言葉だ。だが宇宙ではロイの孤独が強調される。人と知り合えば、その分任務が危険にさらされるからね。そして父親が計画している”リマ計画”を破壊し、彼と向き合わなければならない。痛みを乗り越えるなんてあり得ないよ。僕も幼い頃に母親を亡くしているが、決して乗り越える事はないからね。悲しみを抱えて生きることを学ぶだけで、克服できる訳じゃないんだ。どれだけ最高のスタッフを集めたところで、自分が興味のないテーマなら何の意味もない。だからこの映画では僕自身の人生の経験を思い出して、深く掘り下げたよ。常にそこに立ち返りながら描いたんだ。」と語っている。
また「今回のロイという役を、ブラッド・ピットが引き受けてくれて驚いたよ。ブラッドは興味深い人物なんだ。映画スターは注目されて自信を持ち、作品の中では当然のように何の葛藤もない存在となりがちだが、ブラッドにはいつも葛藤があるから、今回のロイ役には完璧だったね。そして細やかな演技ができる優秀な役者だ。監督の指示を受け入れ、それを他の部分にも活かせる。大変な才能の持ち主なのに軽やかで自然体なんだ。」と語っている。また主演のブラッド・ピットは「本作のルーツになっているのは70年代の映画で、監督ジェームズの視点もそこにある。瞑想的に物語が展開していくが、アクションやスリルもある。そして謎が解けていくんだ。映画の冒頭でロイの父親は英雄として描かれる。宇宙の彼方へ行った人物で、計画を率いていたが途中で姿を消した父親を捜す物語だ。本作はセットも素晴らしいしアクションも圧巻だ。ジェームズ・グレイ監督とはいつか仕事をしようと話していた。本作には彼の個人的な思いが込められているね。生きることも人と関わる事も確かに大変だよ。だからって外ばかり見て自分の内面や人間関係から逃げていいのか?と問いかけているんだ。”外ばかり見ずにお互いを必要としよう” 、このロイの結論が本作のテーマだね。」と答えている。
作品としては、「エヴァの告白」「アルマゲドン・タイム ある日々の肖像」のジェームズ・グレイ監督が手掛けた、ヒューマンSF。出演は主演のブラッド・ピットの他、「ノーカントリー」のトミー・リー・ジョーンズ、「アルマゲドン」のリブ・タイラー、「ワールド・ウォー Z」のルース・ネッガ、「ハンガー・ゲーム」のドナルド・サザーランドなど。公開時はブラッド・ピット主演のSF大作というイメージからエンタメ映画を期待した観客が多かったが、フタを開けてみるとあまりに哲学的なアート作品だったことから評価が低かった本作。典型的な古代ギリシアの叙事詩「オデュッセイア」をベースにしながらも、起伏の乏しいストーリー展開は”退屈”という意見もうなづける。ただ本作におけるブラッド・ピットの演技は素晴らしいし、作品のメッセージも普遍的でありながら、胸を打つ。静かで美しい作品だ。
監督:ジェームズ・グレイ
出演:ブラッド・ピット、トミー・リー・ジョーンズ、ルース・ネッガ、リヴ・タイラー、ドナルド・サザーランド
日本公開:2019年