映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は544本目。タイトルはトム・フーパー監督による、2016年日本公開作品「リリーのすべて」。特典映像としては、『メイキング・オブ・「リリーのすべて」』で、約12分が収録されている。「メイキング」では、原作者のデヴィッド・エバ―ショフが「約20年前にリリーの事を知った。性別適合手術の第一号患者であり、結婚もしていてその妻が支えだったことに驚いた。そして彼女たちの芸術活動に共鳴したんだ。」と言い、トム・フーパー監督は「脚本を読んですぐに気に入った。珍しく三度も涙したよ。これまでに読んだ中で最高の脚本だったから、映画化することをずっと夢見てきたんだ。最初に脚本を読んだときから、エディ・レッドメインを起用したかった。そしてエディの相手役が務まる優秀な役者は少ないから、アリシアが見つかって良かったよ。コペンハーゲンで撮影したんだが、街の美観が保たれた見事な都市だった。一種の厳格さもあったしね。それを観て主人公アイナーの芸術が理解できたんだ。だがあの街で世界初の性別移行が行われたことに驚きもしたね。保守的で家父長的な土地柄だから。そんな場所に漂う”窮屈さ”も映し出したかったんだ。ハンマースホイの絵画に刺激を受けて、彼が描いた部屋を画面に再現した。絵画に似せた照明を撮影部隊に頼んだんだ。”トランスジェンダー”のコミュニティが社会に許容されることを願うよ。この映画が貢献できるなら素晴らしいことだ。複雑な問題を映画だけで解決できるとは言わないが、観客の気持ちが動けばいいね。」と語っている。
主演のエディ・レッドメインは「事前に何の知識も入れずに脚本を読んだんだが、心の奥底まで揺さぶられた。あんなのは初めてだったよ。2人の特別な人物について描かれる、他に類を見ない感動的な愛の物語だ。大いなる勇気と真実の物語に僕はただ圧倒されたよ。トム・フーパーはあらゆる情報を徹底的に調べ上げていた。その上で直感を信じて、感情を大事にするんだよ。そして撮影場所も重要だった。ボヘミアンな世界で生きる、芸術家たちの話だからね。彼らの活動の場には演劇や舞踏も含まれる。芸術家は改革と自由の前線で戦うことが多いんだよ。撮影前の準備期間にまずは脚本を細部まで読み込んだ。そして女性らしい所作の指導を受けたよ。女性らしく振る舞うことで、リリーは自己を解放できたんだ。所作を学ぶことは僕自身が自由になって、リリーを理解するために必要だった。2人の愛の物語に感動してほしいよ、それが映画の土台だからね。」と言い、アリシア・ヴィキャンデルは「彼女たちの複雑で困難に満ちた人生にずっと心を揺さぶられ続けた。エディやトムとの仕事はすばらしい経験だったわ。トムは感情知能が優れていて、繊細な主題を適切に扱うことができるの。そしてリリーが登場するシーンは本当に素晴らしかった。エディがリラックスして演じているのが伝わってきたの。今の時代にこの物語を語れるのは素晴らしいことだわ。社会における意識が高まって”トランスジェンダー”が理解されるようになったから。目に見える変化が起きているのよ。この映画に出演できて、誇らしく思う。」と答えている。
作品としては「レ・ミゼラブル」「英国王のスピーチ」でアカデミー賞を受賞したトム・フーパー監督が、世界で初めて性別適合手術を受けたリリー・エルベの実話を描いた伝記ドラマ。第88回アカデミー賞で「主演男優賞」「助演女優賞」「衣装デザイン賞」「美術賞」4部門でノミネートを受け、アリシア・ヴィキャンデルが「助演女優賞」を受賞している。出演は「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」のエディ・レッドメイン、「エクス・マキナ」のアリシア・ヴィキャンデル、「パディントン」のベン・ウィショー、「ブリッジ・オブ・スパイ」のセバスチャン・コッホなど。愛するパートナーが「本来の性である女性として生きたい」と願ったとき、自分はどう行動できるのか?そして本人の苦悩はどれほどのものなのか?を描いており、エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルの二人の演技が、本作の質と格調を大きく引き上げていると思う。
監督:トム・フーパー
出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル、ベン・ウィショー、セバスチャン・コッホ、アンバー・ハード
日本公開:2016年