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映画「ベスト・キッド:レジェンズ」ネタバレ考察&解説 青春映画としても秀逸なシリーズ新作!音楽とアクションで魅せる新世代のベスト・キッド!

映画「ベスト・キッドレジェンズ」を観た。

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「このサイテーな世界の終わり」「ノット・オーケー」などテレビドラマ畑で作品を発表してきた、ジョナサン・エントウィッスル監督が手掛けた、映画版「ベスト・キッド」のシリーズ通算6作目。1985年に1作目が日本公開されて大ヒットを記録した後、ラルフ・マッチオ主演で3作目までが作られ、女子高校生に主人公を変更した「4」、空手をカンフーに変更してのウィル・スミスの息子ジェイデン・スミスジャッキー・チェンを師匠としたリメイク版、さらにスピンオフドラマ「コブラ会」を経ての本作となる。オリジナル版で主人公ダニエルを演じたラルフ・マッチオジャッキー・チェンの他、主人公リー役は「ミーン・ガール」などに出演してきたベン・ウォン、「シャッター」のジョシュア・ジャクソン、「PUSH 光と闇の能力者」のミンナ・ウェンなどが出演している。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:ジョナサン・エントウィッスル
出演:ラルフ・マッチオジャッキー・チェン、ベン・ウォン、ジョシュア・ジャクソン、ミンナ・ウェン
日本公開:2025年

 

あらすじ

北京でミスター・ハンからカンフーの指導を受けていた高校生のリーは、家族の不幸により母親と共にニューヨークに移住する。リーは周囲やクラスメイトとなじめず、不当ないじめや争いごとなど、さまざまなトラブルに巻き込まれてしまう。そんな中、数少ない友人から助けを求められたリーは友人のために戦うことを決意するが、リーは自身のカンフーのスキルがまだ充分でないことを悟っていた。リーのカンフーの師匠であるハンは空手の達人ダニエルを訪ね、リーへの助けを求める。ダニエルから空手を学んだリーは、空手とカンフー2つの異なる格闘スタイルを武器に究極の格闘大会に挑む。

 

 

感想&解説

初代「ベスト・キッド」でダニエル役を演じたラルフ・マッチオと、2010年版リメイクの師匠だったジャッキー・チェンが共演し、新生「ベスト・キッド」が公開されると発表された時は驚かされた。1985年に1作目が日本公開されて大ヒットを記録した後、ラルフ・マッチオノリユキ・パット・モリタによる”ダニエル&ミヤギ”のコンビで3作目までが作られ、ヒラリー・スワンク演じる女子高生を主人公に変更した「4」、さらに中国に舞台を移し空手をカンフーに変更して、主人公の人種までも変更してしまったリメイク版の計5作品が映画版では存在しているが、2010年のリメイク版とオリジナル版はそもそもまったく違う世界観の作品だったからだ。

オリジナル「ベスト・キッド」と言えば、代名詞の”ミヤギさん”を演じていたノリユキ・パット・モリタ氏が、2005年に亡くなったことを受けての2010年リメイクだったかと思うが、プロデューサーはあのウィル・スミス、そしてカンフーの師匠ハンをジャッキー・チェンが演じて、主演はウィル・スミスの息子ジェイデン・スミスが務めていたことも今や懐かしい。孤独ないじめられっ子が、実は武術の達人の師匠から人間的な成長と技術を教わり、戦いによって人生を逆転させるというプロットはそのままに、オリジナルの良かった部分は踏襲しながらも、スケールが大きくなったことで”大作感”のある良リメイク作に仕上がっていたと思う。そもそも初代の「ベスト・キッド」は、実は地味で小規模な作品だったからだ。

 

さらにスピンオフドラマ「コブラ会」の製作も、新作の追い風になったのだと思う。オリジナル一作目でダニエルのライバルだったジョニーも大人になり、負け犬人生を歩んでいたが過去の過ちから学んだことで”コブラ会”を立ち上げ、生徒に正しい道を教えていこうと奮闘する物語だ。もちろんダニエルも再登場してカラテ熱を再燃させているが、このシーズン6まで続いたドラマシリーズの好評価が、新作制作のきっかけとして作用したのだろう。そして遂に公開された「ベスト・キッド レジェンズ」は、空手の達人としてダニエルをラルフ・マッチオが、カンフーの師匠ハンをジャッキー・チェンが再び演じ、新しい主人公リーを二人の師匠が育てていくストーリーとなっている。そういう意味では、プロット自体はやはり”オリジナル版”を踏襲したものになっており、ベスト・キッド」の典型的なストーリー展開が紡がれるのだが、それでも本作は多くの感動を生む作品になっていたと思う。

 

 

まずベン・ウォンが演じる主人公のリー・フォンは過去シリーズと比べて、圧倒的に成長している主人公だ。初めて入ったニューヨークのピザ店でも気後れなく、しっかり年上の大人ともコミュニケーションできるし、ミアという気になる女の子に対しても積極的だ。中華街では中国語を活かして値引きの交渉もできるし、ヤキモチは焼くが疑問があれば、プライドよりも元カレとの関係を質問できる男として描かれる。そしてカンフーも最初から強い。大人数人に囲まれても、カンフーを駆使して退けられるくらいの強さで、学校でコナーに負けるシーンがあるが、あれはコナーがチャンピオンの為に強すぎるためだ。ミアの父親にボクシングの戦い方をレッスンする場面は、ほとんど「ロッキー」のようで楽しかったが、本作においてリーはフィジカルな強さをすでに体得している主人公であり、従来シリーズの”いじめられっ子”としては描かれていないのである。

 

では本作で主人公として成長するポイントは何かと言えば、彼が自分のトラウマを乗り越えることで精神的に成長する点だ。そしてその成長によって、周りの人間の関係を繋いでいく。ここからネタバレになるが、リーはカンフー大会の逆恨みによって兄を殺されたというトラウマがあり、ミアの父親がボクシングの試合で大怪我を負ったことによりトラウマが蘇ってしまう。そしてミアとの関係も崩れかけるが、そんな彼を救うのがジャッキー・チェン演じるハン師匠だ。ミアの父親が経営するピザ店の為に、NYの格闘トーナメントで優勝することを目指し、ハン師匠はミヤギ道場のダニエルに会いに来る。道場の駐車場にはミヤギ先生がダニエルへ贈った”黄色い車”が今でもあり、二人の関係がいかに強固であるかをさらっと描いているが、ハン師匠はカンフーをダニエルはカラテを教える師匠となり、リーを心身ともに鍛え上げていくのだ。

 

そしてそれと並行して、リーとミアの恋愛模様も描かれていくのだが、これが”青春映画”としても秀逸で、特にBGMの使い方が素晴らしい。作曲したのはドミニク・ルイスというアーティストらしく、「フォールガイ」や「キングスマン:ファースト・エージェント」といった作品を手掛けているが、彼ら二人のシーンはどれもポップな楽曲に乗って微笑ましい場面が多く、音楽演出によってユーモアを感じさせたりもして恋の行方を応援したくなる。特に屋上の道場で、家庭教師のアランの下手くそなギターと歌を聴きながら笑い合うシーンなど、ロマンティックな良い場面だったと思う。そして二人の師匠との特訓を経て、リーは決勝の戦いに赴くことになる。リーには”戦う理由”があり、それは彼にとって何より重要であることを、戦うことに反対だった母親に理解してもらえるシーンは感動的だった

 

そして決勝戦の戦いは、今までの「ベスト・キッド」シリーズとは比べ物にならないくらいのスピードとキレで展開されて、とても見応えがある。そもそもカンフーの基礎があったリーが特訓したのだから、これ位のレベルに達するのも説得力があるのだ。個人的には「スターウォーズ EP1」のダースモール戦を思い出す位、今までとレベルの違う戦闘シーンになっていたし、トラウマを乗り越えて兄の得意技で勝つ展開も、分かりつつも手に汗握った。それにしてもカンフーの訓練をするジャッキーが観れるのは久しぶりで嬉しかったし、演出から音楽、アクションまで高いレベルで融合した新しい「ベスト・キッド」になっていたと思う。エンド・クレジット前に「コブラ会」からのカメオ出演で、ジョニーが出てくるのもファンには嬉しいだろう。過去作からも”シャツの訓練”などの引用はあったが、ラルフ・マッチオジャッキー・チェンの共演作ということで、初代「ベスト・キッド」とリメイク版だけ観ていれば十分に楽しめる新作だと思う。94分に詰め込まれた王道のエンターテインメントとして、映画館で観る価値のある一作だった。

 

 

7.5点(10点満点)