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映画「Rip/リップ」ネタバレ考察&解説 前半は混乱するが、最後には全てスッキリ!名優たちによる硬派なクライムミステリーの快作!

映画「Rip/リップ」を観た。

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「スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい」「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」「炎のデス・ポリス」などのジョー・カーナハン監督がメガホンを取り、Netflixで限定配信されたクライムミステリー。自ら脚本を執筆し出演した「グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち」で注目されて以降、これまでにも数々のタッグを組んできた盟友ベン・アフレックマット・デイモンが、「AIR/エア」「最後の決闘裁判」に続いて本作でも共演している。その他の共演者は、「ミナリ」「バーニング 劇場版」のスティーブン・ユァン、「ワン・バトル・アフター・アナザー」のテヤナ・テイラー、「バレリーナ The World of John Wick」のカタリーナ・サンディノ・モレノ、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のカイル・チャンドラーなど。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:ジョー・カーナハン
出演:ベン・アフレックマット・デイモン、スティーブン・ユァン、テヤナ・テイラー、カイル・チャンドラー
日本公開:2026年

 

あらすじ

廃墟と化した古びた隠れ家で数千万ドルもの現金を発見した、マイアミ警察の警官たち。その金額の大きさが外部に知れ渡ると、あらゆることに疑いの目が向けられ、警官たちも誰を信用していいのかわからなくなっていく。

 

 

感想&解説

ジョー・カーナハン監督の2022年日本公開「炎のデス・ポリス」以来の新作が、Netflix限定作品として公開されたという事で鑑賞。しかもベン・アフレックマット・デイモンを主演に迎えての犯罪映画という事で期待が高まったのだが、個人的には前作以上のエンタメ作品だったと感じる。前作「炎のデス・ポリス」も単純なドンパチだけのアクション映画ではなく、キャラクターや脚本も捻りのあるエンターテインメント作だったが、今作は実話がベースになっていることもあり、かなりシリアスで硬派なクライムミステリーになっている。またアクションだけではなく”犯人当て”の要素も楽しめる作品のも特徴だ。

キャスティングも旧友同士であるベン・アフレックマット・デイモンという名優を主演に据えながら、「ミッキー17」「バーニング 劇場版」「NOPE ノープ」などで印象的なキャラクターを演じていたスティーブン・ユァンや、近作でも「ワン・バトル・アフター・アナザー」でレオナルド・ディカプリオの妻となる武闘派の革命家を演じていたテヤナ・テイラー、「キャロル」「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のようなヒューマンドラマから、「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」「ゴジラvsコング」のようなエンタメ大作まで守備範囲の広いカイル・チャンドラーなど、豪華な演技合戦が楽しめる。

 

映画冒頭、マイアミ警察の女性警部のジャッキーが情報提供者の女性との通話後に何者かに襲われ、大金の場所を誰かにメッセージした後に覆面の男たちに射殺された場面から映画は幕を開ける。その後、実の弟のFBI捜査官にジャッキーとの関係を尋問され、キレるベン・アフレック演じるJ.D.バーンや、上司と口論するマット・デイモン演じる警部補デーン・デュマーズの姿が描かれ、それと平行してスティーヴン・ユァン演じるローや、ヌマやロロといった女性刑事たちを含んだチームもFBIに尋問されていく。その後、デーンがハイアレアの民家に大金が隠されているというタレコミを得たということで、彼らは非公式な現金の押収(リップ)を行うことになる。現場はデジという女性が住む彼女の祖母の家で、警察犬が吠える屋根裏を調べたところ、そこには想像を超える大金2000万ドルが隠されていた。ここからネタバレになるが、この場で現金を全て数えるべきだと言い、メンバーのケータイを没収するデーンに対して、安全確保のためにこの場を早く離れて警察組織に連絡を入れるべきだと主張するJ.D.バーンは激しく口論し、ローは外部の何者かに連絡を入れたりとチームは疑心暗鬼からバラバラになっていく。

 

 

何者かから「30分以内にそこから出ないと全員を殺す。15万ドルで死ぬ気か?」と脅迫の電話があり、実際に彼らは襲われるが、その犯人はカルテルではなく、事件の裏には警察メンバーがいることが発覚する。お互いの不信感が極限に達した二人は掴み合いとなり、ローが家に火を放つ中DEAの装甲車が到着し、金と共に脱出する一行。だがその装甲車の中でデーンはすべての真相を打ち明ける。全てはデーンが仕組んだトラップであり、チームメンバーにタレコミのあった金額をバラバラに伝えていたことによって、電話で聞いた金額と合致したローが裏切り者だったことが判明する。そしてDEA捜査官マティ・ニックスが黒幕であり、彼らが運んでいたのは電話帳だったことが明かされる。逃走したニックスをJ.D.バーンは、ジャッキーの仇討ちとして射殺し、ローも逮捕されて押収した金は無事に戻る。ジャッキーに情報提供していたのはデジだったこともあり、彼女は報酬金をもらうが、それ以外の金にはメンバーは指一本触れず正義を守る。そして朝日の中でデーンとJ.D.バーンは友情を確かめあい、映画は終わる。

 

正直、映画の前半はかなり混乱させられるだろう。デーンたちが所属する”TNT”という組織の名前や、”VCAT(凶悪犯逮捕班)”をFBIが潰したという話、J.D.バーンがジャッキー警部と恋愛関係にあったこと、そしてJ.D.バーンの弟が今尋問しているFBI捜査官であること、デーンのスマホの画面には幼い息子の写真が設定されていること、そこにDEA(麻薬取締局)の存在も描かれて、冒頭15分でかなりの情報量が観客に叩き込まれる。その上でデーンがメンバーに押収する金の額をバラバラに伝えたりするので、とにかくすべてのキャラクターの言葉と行動意図が分からないまま、ストーリーが進んでいくからだ。その後もデーンが警察本部に押収金額を少なく伝えたりと、まるで彼が金を盗もうとしているようにミスリードしてくるが、終盤のタネ明かしによって全ての伏線がしっかりと回収されてスッキリする。この快感が本作の肝だろう。

 

ローが今まで外部に連絡していたケータイを無くした際に、突然家に火を付けるという不自然なシーンから犯人は分かってくるが、その謎解きの手法は鮮やかだし、メンバーがそれぞれに生活苦を抱えているにも関わらず、自分たちの職業倫理を貫いて、犯人を罠にかけるために行動していたことが分かるラストの展開は爽快だ。実際の事件はさすがに銃撃戦やチーム内の裏切りといった事はなく、これらは映画の脚色だが、映画の最後に掲げられる「For Jake」という献辞は、本作のモデルとなった実際の事件に関わった、クリス・カシアーノ警官の息子ジェイクが白血病で亡くなったという事実からクレジットされており、さらにデーンの両手の指に彫られたタトゥーは、「AWTGG=Are We The Good Guy?(僕らは善人?)」と、「WAAWB=We Are Always Will Be(僕らは常に)」というものだが、これもカシアーノ氏と息子さんとの会話からの引用らしい。

 

単なるアクション映画ではなく、裏切り者をあぶり出すミステリー要素と、巨額の大金を見つけた警察官が自分たちの信念と正義を貫くという硬派な”警察映画”にもなっていた本作。シドニー・ルメット監督の「セルピコ」やブライアン・カーク監督の「21ブリッジ」など汚職警官ものは数多くあれど、ベン・アフレックマット・デイモンの好演もあって、かなり見応えのある作品になっていたと思う。Netflix限定作品だったが、こういう作品こそ劇場で観たかった。ジョー・カーナハン監督作のフィルモグラフィーの中でも、特に誰でもが楽しめる娯楽映画になっていたと感じる。

 

 

7.0点(10点満点)