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映画「スノーデン」ネタバレ感想&解説

「スノーデン」を観た。

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社会派と言われるオリバー・ストーン監督のノンフィクション・ポリティカル・サスペンス。主演は「500日のサマー」のジョセフ・ゴードン・レヴィット。「スノーデン事件」と言われる、アメリカにおける個人情報監視の実態を告発した実際の事件をテーマにした作品である。

 

監督:オリバー・ストーン

日本公開:2017年

 

あらすじ

2013年6月、イギリスのガーディアン誌が報じたスクープにより、アメリカ政府が秘密裏に構築した国際的監視プログラムの存在が発覚する。ガーディアン誌にその情報を提供したのは、アメリカ国家安全保障局NSAの職員である29歳の青年エドワード・スノーデンだった。国を愛する優秀な若者だったスノーデンが、輝かしいキャリアと幸せな人生を捨ててまで、自らの愛国に反旗を翻す様を描く。

 

感想&解説

極めて実直で真面目な作りの映画だ。恐らく、実際の「スノーデン事件」を少し予習して予告編を観たら、この映画の内容はある程度予測出来ると思う。映画的な見せ場や過剰なサービスは無く、実際に起こった事実を淡々と説明していく作りの作品である。

 

では、観る価値が無いかと言えば、そんな事は無い。正直、エンターテイメントとしての「面白さ」は控え目だが、実際にアメリカが行なっていた、もしくは今も行なっている監視行為を、短時間で過不足なく知り、自分たちで考える機会を得るという意味では、本作はとても適していると思う。

 

それにしても、アメリカ政府が「PRISM(プリズム)」という監視システムを使って、全世界の人々のメールやSNSを盗聴、盗撮し、そこから情報を収集していた事や、世界中の大企業やG8の政府の内情もリサーチしていた事、更に主人公のスノーデンはマスコミにそれを告発し、その為にアメリカ政府に追われる身となり今でもロシアに亡命中という事実は、下手なフィクション映画よりもよほど衝撃的だ。これは日本も全く他人事では無いし、実際に劇中でも、横田基地では日本がアメリカを裏切った際には、いつでもインフラをダウンさせられる様なスパイウェアを仕込んでいた事が描かれている。

 

この映画、スノーデンがなぜ政府に反旗を翻したか?の動機が直接的には描かれない為、少し解りづらい。だが恋人リンゼイとの不自然な位に長い恋愛関連のシーンの中に、インターネットカメラやPCのフォルダを気にする描写を入れた事や、リンゼイを「自分が守るべき大切な人」という感情を強く入れた事で、改めて「リンゼイも1人のアメリカ国民である」という視点を挟んでいるのだと思う。

 

それによって、国中のデータを監視するというマクロなスノーデンの行為が、リンゼイという個人的でミクロな生活にも多大な影響を及ぼしているという描写になっていると感じた。よってスノーデンの行動は、その罪悪感と正義感からの行動だと解釈出来るのでは無いだろうか。ハワイのCIA工作センターから、データを抜き取り脱出する際の、周りの同僚たちとの友情もグッと来るポイントである。彼らはスノーデンが何をやろうとしているのかを知った上で応援している、本当の愛国者だと思う。

 

本作は専門用語も多く、決してエンターテイメントな映画では無いが、アメリカへの現在進行形の問題提起として、今観る価値のある作品だと思う。あまり公開規模は大きくないが、オリバー・ストーン監督作の「7月4日に生まれて」「JFK」「ニクソン」に並ぶ、骨太の社会派映画である。

採点:6.5(10点満点)

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