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映画「アンビュランス」ネタバレ感想&解説 娯楽映画としてのバランスが素晴らしい!悪趣味ギャグも含めて、マイケル・ベイ監督の良いところ全部盛りの作品!

「アンビュランス」を観た。

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バッドボーイズ」「ザ・ロック」「トランスフォーマー」シリーズなどの大作アクション映画を数多く手掛けてきた、マイケル・ベイ監督の最新作が劇場公開になった。前作「6アンダーグラウンド」がNetflixオリジナル映画として配信限定だったので、劇場公開作としては2017年「トランスフォーマー/最後の騎士王」以来となる。主演は「ナイトクローラー」「ブロークバック・マウンテン」などのジェイク・ギレンホール。共演は「マトリックス レザレクションズ」のモーフィアス役だったヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、「ゴジラvsコング」のエイザ・ゴンザレス、「チョコレートドーナツ」のギャレット・ディラハントなど。これぞマイケル・ベイとしか言いようのない、ノンストップアクション作品になっている。2005年制作のデンマーク映画「25ミニッツ」のリメイク作品らしい。今回もネタバレありで感想を書いていきたい。

 

監督:マイケル・ベイ
出演:ジェイク・ギレンホール、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、エイザ・ゴンザレス、ギャレット・ディラハント
日本公開:2022年

 

あらすじ

アフガニスタンからの帰還兵ウィルは、出産直後の妻が病に侵され、その治療には莫大な費用がかかるが保険金も降りず、役所に問い合わせてもたらい回しにされるだけだった。なんとかして妻の治療費を工面しようと、血のつながらない兄のダニーに助けを求めるウィル。犯罪に手を染めるダニーが提案したのは、3200万円ドル(約36億円)もの大金を強奪する銀行強盗だった。計画通りならば、誰も傷つけることなく大金だけを手にするはずだったが、狂いが生じて2人は警察に追われる事態に。やむを得ず逃走用に救急車に乗り込んだ2人だったが、その救急車はウィルに撃たれて瀕死となった警官を乗せていた。乗り合わせた救命士キャムも巻き込み、ダニーとウィルはロサンゼルス中を猛スピードで爆走することになる。

 

感想&解説

2005年制作のデンマーク映画「25ミニッツ」のリメイク作品という事だったが、どうやらマイケル・ベイ監督はそれを否定しているようだ。ベイ監督自身「25ミニッツ」を観たこともなく脚本も知らなかったらしい。そういう意味で「自分の映画」として撮影をしたという事だが、この言葉は嘘偽りなくこれぞ”マイケル・ベイ作品”というべき、ノンストップ・アクション映画になっていたと思う。とにかく1秒たりとも画面が止まっていることがなく、ものすごい軌道でカメラが動きまくる。ドローン撮影を駆使して銀行の中でもビルの上からでも、観た事のないカメラワークで空間を切り取り、派手なアクションシーンを魅せていくのである。この動きまわる画面を観ているだけでも本作はかなり楽しめる。もちろん爆破シーンも満載だし、マイケル・ベイのファンなら確実に満足できる一作だろう。

ただ本作はアクションシークエンスだけではなく、実は演出やキャラクター造形がとても良くできている。まさかマイケル・ベイ監督作品で、泣かされるとは思わなかった。映画の冒頭、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が演じる退役軍人のウィルは、妻エイミーの癌の治療費のために大金が必要なのだが、保険会社のオペレーターに杓子定規な対応をされ、「血の通った人間と話がしたいんだ」と告げるシーンから始まる。無情にも電話は切られるのだが、妻の腕には幼い子供が抱かれていて、ウィルの置かれた厳しい環境がすぐに観客に理解できる。そしてウィルは、「仕事の面接に行ってくる」と妻に嘘をつき、養子縁組をされた血の繋がっていないジェイク・ギレンホール演じる、兄ダニーのアジトに金の無心のために訪れる。彼らは子供の頃は固い絆で結ばれていたが、ダニーは銀行強盗の常習犯だった為にウィルは距離を置いていたのだ。そして、そこからウィルは3,200万ドルという大金を狙う銀行強盗の仕事をダニーから持ちかけられるわけだが、彼は葛藤の末に仕事を受けてしまう。

 

ここまでのストーリーの流れが見事で、ウィルとダニーそれぞれの性格や関係性などが、とても整理されて理解できる。もちろん犯罪者ではあるのだが、このウィルという主人公に感情移入させられるのである。そしてそれと並行して、キャムという女性救急救命士が交通事故現場から少女を救助するシーンが描かれるのだが、一目で重症を負っている少女を気遣いながら彼女を勇気づけ、パニックになった母親の対応には”娘の手を握ることだけ”を指示することで、彼女が的確にプロの仕事をする人物である事が伝わってくる。これらのシーンにより、このキャムという人物の性格やキャリアが理解できるのだ。そしてダニーとウィルは仲間たちと共に銀行を占拠し、現金3200万ドルを奪取するのだが、突発的なトラブルにより、警察やLA特殊部隊に銀行強盗がバレてしまい銀行の前で銃撃戦となる。この市街戦のシーンは、かなりあえて大仰な音楽で盛り上げたりせずドライに突き放した描写になっており、強烈にマイケル・マン監督の「ヒート」を思い出すシーンになっていたのも最高だった。

 

ここから事故現場に駆け付けたキャムの乗る救急車をダニーとウィルが強奪し、負傷している警察官と共にカーアクションするという流れになる。タイトルの通り「アンビュランス(救急車)」で、警官たちからLAの街を逃げるのである。警官ザックは銃で撃たれたことにより大量出血しているので、このままでは死んでしまう。警察官殺しは非常に罪が重いためダニーとウィルはなんとかキャムの手を借りつつ、警官ザックを延命させながら逃げ切らないといけないという展開になるのだ。これにより単純なカーアクションだけではなく、”タイムリミット・サスペンス”の要素も物語に絡んできて、ますます目が離せない。パトカーはもちろんのことヘリコプターからの追跡も受けつつ、学生時代に犯罪心理学をダニーと学んだというFBIの捜査官クラークまで登場し、犯罪者だった父親の仲間であるギャングのパピも巻き込みながら、彼らはひたすら逃走劇を続けるのである。

 

さらにここにマイケル・ベイお得意の悪趣味ギャグシーンが挟み込まれる。バッドボーイズ2バッド」などは今でも記憶に残るシーンが満載の作品だったが、本作でいえばもちろん中盤の「オンライン手術シーン」だろう。出血がひどい警官ザックの手術を救急車の中でするため、キャムの元恋人である医師とゴルフ場にいる外科医をオンラインで繋ぎ、彼らの指示を受けながらキャムが手術を行うというシーンなのだが、これが予想以上に長くてグロい。しかも手術中なのに車のスピードを落とせなかったり、腹の中に手を入れている手術の途中でザックが目を覚ましてしまい、パニックになったウィルがいきなりザックを殴ることで気絶させる場面などは、なんとも笑っていいのか悩むシーンとして、ベイ監督作品らしい。他にもショーン・コネリーの話題の時に1996年公開「ザ・ロック」のセリフが引用されるのだが、若い警官は俳優ドウェイン・ジョンソンの”ロック様”しか知らないという自虐ネタが出てきたり、ふと「バッドボーイズ」のタイトルが出てきたりと、過去作への目くばせも楽しい。

 

 

ここからネタバレになるが、本作の白眉は終盤の展開だろう。マフィアのボスであるパピに助けられたダニーとウィルは、息子を殺された腹いせにキャムと警官ザックを引き渡せと迫られる。そこでウィルは彼女たちの命は絶対に救うという信念の元、ダニーと対立してでもパピの要求を拒絶するのだ。こういうシーンがあるだけで胸が熱くなり、グッと映画の格が上がる気がする。そして血が繋がっていない二人を、「偽の兄弟」とバカにした事をきっかけにダニーがパピを射殺し、キャムによってウィルが撃たれ瀕死となったことにより、一同は病院に向かうことになる。そして怒りによって狂暴化したダニーは、病院前に大挙した警察隊の前でキャムを道連れに自分も死ぬと言い出し、キャムを盾にして車外へ出ようとした際、なんとウィルによって撃たれてしまう。だが撃たれたダニーはウィルを見つめ、「すまなかった」と言い残し息を引き取る。その時に、幼少期のウィルとダニーの映像がフラッシュバックするのだが、このラストはジェイク・ギレンホールの演技も相まって、まるでシドニー・ルメット監督「狼たちの午後」のような、60年代アメリカン・ニューシネマの名作を観ているようだった。

 

その後、冒頭でキャムが救出した少女リンジーの元を訪れる描写を入れることで、キャムの成長をしっかり入れる伏線回収も上手いし、ウィルの妻子がどれほど彼を愛しているのか?の描写も入れてきて、こちらの涙腺を緩ませてくる。もちろんウィルは犯罪者であり許されないことをしたのは間違いないが、冒頭から彼の動機をしっかり描いている事と、常にザックとキャムの命を守ることを優先したウィルの行動から、彼らが最後にウィルを守る行動に出ることにも説得力を感じる。「人間は間違いを犯しても、またやり直せる」というメッセージを感じるのである。もちろん爆発過多な演出も含めて、瀕死の警官があんな手術で生き残れるはずもなく、いわゆるリアリティはほとんど無い。おまけに警察に顔バレしまくっている兄弟が絶対に最後まで逃げられるはずがないので、破滅的なラストに向かっていることも正直予想はつく。ただ本作はそういう状況に巻き込まれた主人公が、人としての尊厳を捨てずにあがく物語として、個人的には非常に好ましい映画だった。またマイケル・ベイならではの娯楽性もしっかり担保されていて、エンタメ映画としてバランスが良いのだ。マイケル・ベイ監督作品の中では、個人的に「ザ・ロック」「ペイン&ゲイン」に並ぶ快作であった。

8.0点(10点満点)


ザ・ロック(字幕版)


バッドボーイズ