映画を観て音楽を聴いて解説と感想を書くブログ

エンタメ系会社員&バンドマンの映画ブログです。劇場公開されている新作映画の採点付きレビューと、購入した映画ブルーレイの紹介を中心に綴っていきます!

映画ブルーレイ購入記 ネタバレ&考察Vol.524:「鬼火」

映画好きが購入したブルーレイを、メモ代わりにブログに残していく記事。今回は524本目。タイトルはルイ・マル監督による、1977年日本公開作品「鬼火」。特典映像としては「上原徹氏による作品解説」が収録されている。「死刑台のエレベーター」「恋人たち」「アトランティック・シティ」などで有名なフランス人監督の巨匠ルイ・マルが手掛けた、人間ドラマ。63年度ベネチア映画祭では「審査員特別賞」、イタリアの批評家選定では「最優秀外国映画賞」を受賞している。ジャンヌ・モローが主演したルイ・マルの初期代表作「死刑台のエレベーター」から5年後に発表された、彼の新たな代表作だ。出演は、「太陽がいっぱい」などのモーリス・ロネ、「突然炎のごとく」のジャンヌ・モロー、「地下室のメロディー」「アメリカの夜」のアレクサンドラ・スチュワルトなど。

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作品としては、ブルジョワアルコール依存症の男が自殺に至るまでの48時間を、モノクロームの画面で淡々と描いていく内容で終始陰鬱としている。モーリス・ロネ演じる主人公アランは30歳という設定だが、ルイ・マル監督自身も財閥の御曹司として育った30歳の頃の作品という事で、主人公アランは監督を投影しているというのが通説だ。彼が死ぬ前に過去の友人の元を順番に訪れていくというストーリー展開だが、それぞれ安定した生活を送ったり、麻薬に溺れて創作の夢を追いかけていたり、政治活動を続けていたりする彼らとの間に距離を感じ、結局は自らに向けた銃の引き金を引くまでのストーリーなので、ルイ・マルの”厭世観”が炸裂した映画になっている。ただ、同じくフランスの作曲家エリック・サティによるピアノの劇伴「グノシェンヌ」と「ジムノペディ」が、この映画のムードには見事にマッチしており、「鬼火」といえばエリック・サティの曲を思い出す方も多いだろう。またトム・フォード監督による2009年の映画で、同じく自殺を決意した男の最後の1日を描いた作品「シングルマン」は、本作からかなり影響を受けていると思う。人を愛することも、愛されることもできず絶望した男の自殺劇はいかにもフランス映画的でペシミスティックだが、カメラワークや構図は巧みで最後まで目が離せない、「死刑台のエレベーター」「恋人たち」に並ぶルイ・マル監督の代表作だ。

 

 

監督:ルイ・マル
出演:モーリス・ロネ、ベルナール・ノエル、アレクサンドラ・スチュワルト、ジャンヌ・モロー
日本公開:1977年(1963年製作)